日本のお墓の原点は、イザナギがイザナミと決別するために黄泉津比良坂に建てた「千引石(ちびきいわ)」であると考えられています。大きな岩に霊力を感じ、自然回帰を願ったシンボル。プリミティブな思いが表現できている自然石タイプの碑は、当店の定番でもあります。
岩を切って磨いただけ、といっても、建てるまでには実は普通以上にしっかりした技術と設備が必要なのです。
まず彫刻面を切り出して磨きます。面全体に均等な力で、研磨盤の粗い番手から細かい番手まで丁寧に何度も磨きをかけることでようやく鏡のような美しい艶が生まれるのです。
文字彫刻にはひときわ神経をそそぎます。まず石の形(顏)を見て、一番美しく(べっぴんさんに)見える位置に文字を配置します。文字の大きさも石の形に合わせます。それから字の払いやとめなどが一番きれいな立体にでるように、微妙な凹凸をつけながらハンドタイプのサンドブラストで一字一字彫っていきます。
据え付けるのも四角い石を据えるのとは大分ちがいます。まず自然石の台石を据えつけ、本体碑石との接合部分にほぞとアンカー穴を入れますが、この作業を現場で手加工で行います。
そうやってできた自然石碑。お墓だけでなく、記念碑や歌碑などにもたくさん使っていただきました。
太古の昔にできた自然の形を、できるだけ人為的に変えないように…。でも実は一番人の手がかかっている。自然と匠の魂の融合、とでも言わせていただきましょうか。(拝)