ころころ通信

10号 2012年4月発行

対談・職人気質 -その道のプロにきく仕事へのこだわりとご先祖祀りについて思うこと-

第4回 「人が集まる空間としての墓地、その美とひろがり」 ~両角修次さん~
一級建築士。伝統道具や家具の店「もろずみ鉄木堂」を営み、書もたしなむ。富士見の名所を歩いて回る「おらが山里ネットワーク」の運営や、諏訪の新しい名産を販売するイベント「スワいち」富士見エリアの会場設計など、町おこしに貢献。富士見町の建築物や歴史、墨客についての研究もライフワークとして行っている。

 
― 建築の立場から、どんな町づくりを考えますか?
「この高原の町はいろんな魅力がありますね。まず豊かな自然資源。そしてその中で生活する人々が生んだ里山風景や古い建築物。建築だけ見ても宿場町らしく旅館、農業や養蚕を行う民家、空気がよいことから療養所・・・といろんなタイプがあります。建築も含めた町並み空間全体をプランニングしてみたら面白いんじゃないかと思うんです。」
 
― 参考にする建築はありますか?
「僕はイタリアの建築が好きで、町づくりにもとても参考になると思っています。特にヴェネツィアは町全体がひとつの建築物といわれますが、人が集まる空間づくり、誘導するストーリーづくりがとても上手なんですよ。著名な建築家の一人カルロ・スカルパはおもしろい。彼の作品でブリオン・ヴェガという墓地の設計があります。富豪ブリオン家の墓なのですが、既存の共同墓地に隣接した広大な土地に、夫婦の埋葬地と墓碑、礼拝堂まで備えた墓を展開した見事な作品です。墓を空間アートとして表現し大勢の人の鑑賞の対象にもなったんです。人が集まるということが、町でも公園でもお墓でも大切な目的ですね。」
 


― 建築でも石を使うことも多いと思いますが、石という素材はどんな魅力がありますか?
「スカルパと同じくらい私が敬愛する建築家・白井晟一は石の建築家でもあり実存主義の哲学者でもありました。実存主義を敢えて一言で言うと「実存は空想を超える」ということだと思うのですが、石はもっとも風化しにくく、白井も実存の比ゆとしてよく用いた素材です。自然そのものだから表現も無限なのが一番の魅力ですね」
 
― 建築家・両角さんの考える「お墓」とは?
「お墓はご先祖の空間を共有する場所だと思います。お墓に行くとご先祖のことを考える。一人一人にそれぞれの世界・空間があったわけで、その集大成が自分なんです。人間のつながり、歴史のつながりを痛感しますね」
 
ブリオン・ヴェガ。エントランスから見た二つの円の重なりはスカルパ生涯のモチーフ。参考文献:「建築と都市」1985年10月臨時増刊号「カルロ・スカルパ作品集」