ころころ通信

16号 2014年1月発行

「自然」について考えることの多い紙面になりました。
四季のうつくしい日本。日本のお墓には自然への感謝も込められているように感じます。
  

対談・職人気質 -その道のプロにきく仕事へのこだわりとご先祖祀りについて思うこと-

第8回 「山は先生、山は神」、日本人のDNAに組み込まれた心 ~竹内敬一さん~
 
小淵沢在住の国際山岳ガイド。八ヶ岳編笠山の山小屋「青年小屋」を運営。山梨県警とともに長く山岳救助活動にも携わり、現在は同署山岳救助隊長。日本山岳ガイド協会理事、八ヶ岳山岳ガイド協会会長、環境省自然公園指導員、北杜市観光協会理事などいくつもの重要な立場から、指導や講演も多い。信仰、環境、観光など様々な分野から登山の理解を深めともに行動してくれる、山のプロフェッショナル。

 
― 竹内さん流山岳ガイドとは?
山岳ガイドは土日が中心です。お客様は初心者や女性、そして冬山に挑む上級者まで様々です。それぞれの人の目的やレベルに応じて安全な山登りをサポートすると同時に、山への畏敬の念や自然の多様性を感じてもらいたいという思いで案内しています。
 
 
   
― 山への畏敬は登山の原点なんですね。
日本では昔から山岳信仰があって、登山は修行の一環でしたからね。西洋の登山は約200年とまだ歴史が浅く、「制覇」することが目的ですが、日本では記録に残っている限りでも1400~1500年の歴史があり、おそらく縄文の頃から生活の中で登山が行われていたと考えられています。私も「山は生き物であり、先生であり、神様」という思いで日々対面しています。「自然をどのように制御するか」をモットーとしてきた西洋人とちがって、自然に生かされていると感じてきた日本人には、DNAの中に自然への親しみと尊敬が組み込まれていると感じますね。だから私も山に失礼がないように、山に合わせた体力づくりや知識の習得を心がけています。
 
  
― 救助活動でも活躍されていますね。
基本的に警察が単独ではできない遭難の場合に私が出動しますので、危険で難しい現場が多いです。残念ながら遺体にも遭遇します。何ヶ月も時間が経ってしまっているものもありますが、傷つけないよう細心の注意をはらいます。「骨一本も残すな」と他の隊員にも徹底し、お経を読んでケルン※を立て、遺体は丁寧にくるんでヘリの中に入れます。遺体は家族にとってかけがえのない「形」で、気持ちを整理するにも遺体があるのとないのとでは全然違いますから。
※ケルン・・・山頂や登山路に、道標や記念として石を積み上げたもの。
 
―どのような思いでケルンを立てるのですか?
仮のお墓のつもりですが、やはり手を合わせるのに何か形を置くのが自然なように感じるんです。お墓は生きている人が亡くなった人を偲び敬意を表するための対象物です。仏像にしても位牌にしても、形があるから気持ちが向く。岩や木には神が宿る、と昔の日本人は考えましたが、お墓はそういう思いで建てられてきたものなんでしょうね。