ころころ通信

17号 2014年5月発行

今年の2月は記録的な大雪で大変でしたが、それでも春はやってきてくれてありがたいことです。
八ヶ岳の美しい春景色の中、家族のつながりを考え直す記事が集まりました。
 

対談・職人気質 -その道のプロにきく仕事へのこだわりと家族のつながりについて思うこと-

第9回 命をうけとめる ~助産師 雨宮幸枝さん 山本由紀さん~
  
親子3代にわたる韮崎助産院の助産師。母・雨宮さんの厳しくも愛情のこもった指導に加え、娘・由紀さんのカイロプラクティックや整体の技術を取り入れた骨盤ケアを通して、自然で無理のない妊娠生活と分娩をサポートしている。産後の指導も充実。家庭的な雰囲気で、出産後も交流が続く人が多く、親子2代の分娩でお世話になったという例も少なくない。

 
―その節はお世話になりました。相変わらずとってもお元気そうですね。
雨:(息子・空を見て)大きくなったねぇ。ひとなつこくていい子に育ってるよ。
  
―先生は妊婦検診のときもそうやって語りかけてくださいましたよね。
雨:おなかの赤ちゃんはちゃんと聞こえてるだよ。「手をあげて」って言ったらちゃんとあげるもの(笑)。家族のみんなから愛されてる実感を赤ちゃんに与えてあげることが何より重要なの。だから自宅でもみんなで語りかけをしてあげてほしいね。
 

 
―家庭生活の指導も真剣ですよね。
雨:毎月の検診はたっぷり時間をとりますよ。今の世の中、一人の妊婦を予定日まで管理して正常な分娩にもっていくのは、実は並大抵のことじゃない。その人の食生活、睡眠時間、働き方、それからほかの家族の生活のしかた、そういったことを検診のときに聞き出したり感じ取ったりしてるんだけど、夜中までパソコンしてたり、食事も不規則だったり少なかったりする人が多い。そういう実情はよく注意して面談しなければわからないでしょう。

今の日本は乳児死亡率が低いから、みんな出産をなめてる節があるけど、本当は自己管理がものすごく大切な一大事業だってことを妊婦さんも家族も認識しなきゃだめ。助産院では特に、自然に産む力をつけてもらいたいから。

  
―そのための厳しい指導なんですね。運動や身体能力も昔と違ってきて大変なこともあるんですか?
由:骨格と栄養分が農村中心だった世の中とはぜんぜん違ってきていますよね。足腰が弱くて骨盤がゆるくなってるんです。だから子宮がただでさえ骨盤の中に入り込むような位置にまで下がってきて、だから赤ちゃんがとても窮屈な思いをすることになるんです。この助産院では骨盤や背骨を矯正する体操教室やゆがみ矯正治療を取り入れました。赤ちゃんが電車だとすると産道はトンネル。赤ちゃんは産道を回旋しながら出てくるんだけど、きちんとレールがしいてあれば無理なく出てこれるんです。そのきちんとしたレールがゆがみのない体というわけです。
雨:命をあずかるんだから、こっちも真剣勝負だよ。私ね、笑われるかもしれないけど、予定外にお産が近くなったり危険なお産になりそうなときは鼻でわかるの。「なんか生臭い」みたいな。そういうときはお寺でお経を読んでもらうんだよ。こんなに科学や医療が発達してる時代だけど、やっぱり赤ちゃんは宇宙から来るもの、というかんじがするんだよね。さずかりものだから、神仏の助けも借りて、私も全力で赤ちゃんとお母さんを助ける。
  
―そんなふうに守られて生まれてきた赤ちゃんは幸せですよね。
雨:どの子もみんなかわいいよ。私がとりあげたお産は絶対忘れない。大変な仕事だけど、命がつながった瞬間の喜びには替えられない。今70才だけどね、まだまだやるよ。(次女田鶴をみて)あんたもここで産めし。