「有り難う」に希望を込めて

Sさんが夫・Yさんと結婚したのはYさんが亡くなるわずか1年前でした。
病気や生き方と向き合う中で、お墓をどうするかの話も出ました。「主人はお墓はいらない、山でも海でも撒いてくれ、と言ったんです。葬式もしなくていい、と。それも周りへの配慮から来たものだったのでしょうけど、私は違和感を感じました。結婚するとき、彼にとって再婚相手の私をむこうの家族はとても喜んでくれました。そんな人たちに対して、本人が要らないと言ったからって、私が何もしないでいるようなことは申し訳ないと思ったんです。それに子どももいない私たちが、一緒にいたことを形として残せないのは寂しい。だからお墓は必要、と主人に伝えました。そしたら、がぜんやる気になってデザインまで考えてくれたんです」。

 
「お墓ができた時、ものすごく安心したのを覚えています。沖縄の旅先で亡くなったから、連れて帰るところから葬儀までそれは大変でした。でもお墓ができて、少しずつ別の形で主人と対話できるようになりました。俺があの世に行っても妻は笑ってるって安心させたい、自慢させたい。だから仕事もやめないでよかった。これからは仕事も含めて自分のやりたいことは一人であることを気にせずなんでもやります。一人を楽しんじゃおうって」。

 
今、Sさんは企業の管理職として精力的に仕事をし、出張も多い毎日です。
そんな中仕事帰りにおいしいお店に立ち寄ったり、友人や妹たちと旅行に行ったりすることも楽しみの一つ。
また、最近覚えたバルーンアートで地元白州町の文化祭をはじめ、様々なイベント会場に出向くようになりました。子どもたちの笑顔を見ることも張り合いだとのこと。
定年後は地域のお年寄りのための移動販売をすることが夢。実はそのアイディアも幸雄さんが新聞で見つけた記事がきっかけでした。
「おまえ、将来こういうことすればいいよ、人の役にたつこと」。

「人に楽しんでもらいたい。そのためにはまず自分が楽しむ。『有り難う』と自分たちの名前が彫られたお墓をお参りするたびに、気持ちが新たになるんです」。


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