万感の思い「平安」

素朴な自然石をそのまま碑石としたM家のお墓。
本体も台石も花立香炉にいたるまですべて地元八ヶ岳の石が使われました。
どっしりと収まりのいいフォルムは落ち着きがあり、愛らしさを感じます。
正面には、妻のA子さんが自筆された「平安」の文字。優しく、上品な書です。
 
お墓に埋葬されているのはA子さんの実家の両親と妹。
お墓のどこにも家名や故人名は刻まず、ただ「平安」のみにしたのは、家や個人にとらわれず皆仲良く安らかに眠ってほしいという願いから。今後は夫のTさんとともに受け継いでいく予定です。
 
「実は家族は決して仲がいいわけじゃなかったの」とA子さん。
存命中は父の気性の激しさに悩まされたり、不遇と感じた時期もあったと言います。
「でも、亡くなって月日が経つうちにだんだん気持ちが落ち着いてきて。八ヶ岳に永住して、この自然の中にいると昔のいさかいがどうでもよくなるのね。そんな気持ちの変化を一言で言い表すとすれば『平安』なんです」。
Tさんもいろんな感情も静めてくれるこの葉がお墓にあることで、落ち着いた気持ちで亡き人と向き合える気がするといいます。「これからの家族の生き方の糧としたいと思います」。
 
今まさに、すべての人が欲している「平安」の世。
飾り気のない、あるがままの石の形を活かした溝呂木家のお墓は、ふと立ち寄る人たちにも静かな安心感を与えてくれそうです。
 

自宅にあった自然石を使いました。

 


施工例一覧