お知らせ

2012年5月5日

10号 2012年4月発行

対談・職人気質 -その道のプロにきく仕事へのこだわりとご先祖祀りについて思うこと-

第4回 「人が集まる空間としての墓地、その美とひろがり」 〜両角修次さん〜
一級建築士。伝統道具や家具の店「もろずみ鉄木堂」を営み、書もたしなむ。富士見の名所を歩いて回る「おらが山里ネットワーク」の運営や、諏訪の新しい名産を販売するイベント「スワいち」富士見エリアの会場設計など、町おこしに貢献。富士見町の建築物や歴史、墨客についての研究もライフワークとして行っている。

 
― 建築の立場から、どんな町づくりを考えますか?
「この高原の町はいろんな魅力がありますね。まず豊かな自然資源。そしてその中で生活する人々が生んだ里山風景や古い建築物。建築だけ見ても宿場町らしく旅館、農業や養蚕を行う民家、空気がよいことから療養所・・・といろんなタイプがあります。建築も含めた町並み空間全体をプランニングしてみたら面白いんじゃないかと思うんです。」
 
― 参考にする建築はありますか?
「僕はイタリアの建築が好きで、町づくりにもとても参考になると思っています。特にヴェネツィアは町全体がひとつの建築物といわれますが、人が集まる空間づくり、誘導するストーリーづくりがとても上手なんですよ。著名な建築家の一人カルロ・スカルパはおもしろい。彼の作品でブリオン・ヴェガという墓地の設計があります。富豪ブリオン家の墓なのですが、既存の共同墓地に隣接した広大な土地に、夫婦の埋葬地と墓碑、礼拝堂まで備えた墓を展開した見事な作品です。墓を空間アートとして表現し大勢の人の鑑賞の対象にもなったんです。人が集まるということが、町でも公園でもお墓でも大切な目的ですね。」
 


― 建築でも石を使うことも多いと思いますが、石という素材はどんな魅力がありますか?
「スカルパと同じくらい私が敬愛する建築家・白井晟一は石の建築家でもあり実存主義の哲学者でもありました。実存主義を敢えて一言で言うと「実存は空想を超える」ということだと思うのですが、石はもっとも風化しにくく、白井も実存の比ゆとしてよく用いた素材です。自然そのものだから表現も無限なのが一番の魅力ですね」
 
― 建築家・両角さんの考える「お墓」とは?
「お墓はご先祖の空間を共有する場所だと思います。お墓に行くとご先祖のことを考える。一人一人にそれぞれの世界・空間があったわけで、その集大成が自分なんです。人間のつながり、歴史のつながりを痛感しますね」
 
ブリオン・ヴェガ。エントランスから見た二つの円の重なりはスカルパ生涯のモチーフ。参考文献:「建築と都市」1985年10月臨時増刊号「カルロ・スカルパ作品集」

 
 

2012年5月2日

石のある風景 〜高森・桜の下〜

富士見町にも連休直前、やっと桜が見ごろになりました。
信濃境駅から北へあがった高森集落には、
弘法大師堂という萱葺き民家風の古いお堂があり、そこの枝垂桜が町の名所のひとつにもなっています。
ここを中心に、桜が点在。
小さな規模の集落墓地や屋敷墓のバックにも桜があります。

こんなお墓、ステキですね。

お客さまのアイディア 木工とコラボ

大谷石の薪ストーブ壁のご依頼をいただいたRAKAIA農場さん。
こんどは十和田石の板材を使って、ご自身で小さな台をつくってみた、とのこと。
事務所に持ってきてくれました。
薪ストーブでピザなどを調理し、取り出したものを仮置きするためのものだそうで、熱にも耐える素材が必要だったということでした。
 
大谷石も十和田石も凝灰岩で、風化は早いのですが、比較的熱には強く、御影石のように「パリン」と割れる心配もあまりありません。
それに、色や斑がとてもきれいで、インテリア向きです。
 
RAKAIA農場さんは農業のかたわら、木工の作品づくりもされます。
石の特性も活かしてくれた斬新なアイディア、うれしいです。
 
皆さまもこんな風に石を使った例があったらぜひお知らせください。
他の人たちにもご紹介したいです。

2012年3月10日

震災から1年・・・復興を祈念して

東日本大震災から明日で1年。
亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げますと共に、被災された地域の皆様、
また、そのご家族の方々に対して、心よりお見舞いを申し上げます。 一日も早い復旧復興をお祈り申し上げます。

全優石といとう石材は、復興を願って様々な取り組みを行ってきました。
全優石ではお墓の被害調査、お墓の修復への会員店による支援、デザイナー浅葉克己氏との連携による津波石建立やポスター頒布、墓石復旧工事に係る悪質業者の存在を消費者へ注意勧告等…。
いとう石材からは全優石を通した義援金募金に加え、地震発生直後の昨年3月20日に店内でチャリティーバザーを行い、売上全額を「赤い羽共同募金」へ寄付しました。このイベントは単にお金を送るだけでなく、被災地から離れた小淵沢にあっても被災地のことを思い、災害や環境のことを考えさせられ、沈みがちだった気持ちを復興の希望へと変える、というとても大きな意味を持ちました。フリーマーケット参加者の皆様や地域の皆様のご協力にあらためて感謝申し上げます。

微力で直接現地で復旧活動に参加はできませんが、全優石の取り組んでいるポスター頒布活動にできる限り協力していきたいと思います。

上の画像にもあります、パウル・クレー&浅葉克己デザインのポスターを3000円で販売いたします。
この売上の収益金は全優石の津波石建立事業に充てられます。
まとめてとれば送料が安くなりますので、ぜひお申込みください。
ご希望の方はのお問い合わせボタンより「パウル・クレーポスター注文」と件名を入れて送信してください。

2012年3月5日

お客様感謝フェアが始まりました。


全優石で行っている、春恒例のキャンペーン「お客様感謝フェア」が始まりました。
期間中にご成約いただいた方の中から旅行券など豪華賞品が抽選で当たります。
当店でもほぼ毎年ご当選者様がでています。
ご成約金額50万円分で1口。おひとり様何口でもご応募いただけます。
応募期間は3月1日から5月10日まで。
ご建墓を検討されている方はぜひ、この機会に!

2012年3月1日

9号 2012年1月発行

対談・職人気質 -その道のプロにきく仕事へのこだわりとご先祖祀りについて思うこと-

第3回 「恨みは水に流し、恩を石に刻む」 〜龍澤泰孝さん〜
世界的にもユニークな公害問題に取り組んできた学識者が中心となって発足した、環境を考える会「日本環境会議」の会員でもあり、「やまなし環境会議」の会長。本職は日蓮宗法光寺(甲府市)の住職。他、里親会「きずな会」会長や甲府市国母地区子どもクラブ指導者協議会会長、保護司など多方面で活躍。

 
― 様々な場でご活躍の龍澤先生ですが、今回は「やまなし環境会議」の会長であるお立場にちなんで、現代社会で何かと耳にすることが多い「環境」をテーマに伺えますか?
私たち人間が幸せに平和に暮らすために欠かせない、「四つの環境」について考えてみましょう。一つめは「自然環境」。大地、空気、水に守られて私たちは生きている。さらに地球、太陽、宇宙。とてつもない数のことを昔の人が「有難い」と表現したように、この無数の星々がある大宇宙の中で私たちが存在するというのは表現しがたいほどありがたいことですよね。二つめは「社会環境」。ご近所、地域、学校、職場などの人間社会。お世話になりあって、共に生かしあって暮らす社会です。三つめは「家庭環境」。両親あっての自分、親の姿を見て育つ、人格形成の大事な原点です。四つめが「教育環境」。信仰も含む言葉や知識、教養を身につける場です。残念ながら、最近はこの四つの環境を破壊する出来事が続いている。福島原発事故は自然環境破壊の最たるものですし、通り魔事件の多発、親殺し子殺し…。「お金さえあればいい」「自分さえよければいい」という考え方の表れだと思います。
 
― 難しい問題ですね。破壊をなくす、減らす策はあるのでしょうか。
「自分さえよければいい」から「自他ともに栄える」という気持ちになることだと思います。そのために教育があるんです。学ぶこと。教育の目的はなんだと思いますか?教育基本法の冒頭、教育の目的の項に「人格の完成をめざし…」とあります。完成された人格を持った人って、仏教でいえばおシャカさまのことですよね。学ぶことによって相手を知ってその立場になって考えられるようになれば、おシャカさまに少しでも近づくことができる。「思いやり」の心を育てることが、学ぶことなのです。日本人はもともと「恨みは水に流し、恩は石に刻む」という思いやりの精神を持っているんですよ。
 
― 感謝の心が変わらないように石に刻むんですね。
時間と空間を越えて大切な人の魂を尊重するために石を使うというのは、古今東西共通しています。石はすごいですね。デジタル化が進んで、少し前のレコードやカセットなどの媒体は使えなくなってきているのに、石は何百年何千年も残るでしょう。こんなハードはどこにもないですよ。私が住職を勤める寺にも小さないしぶみがありましてね。法華経の教えにも通じる「学ぶときの心得・3原則」を言葉にして石に刻んであるんです。
 
― 「素直に聞く」「まじめに考える」「真剣に行う」3つの言葉が刻まれていますね。
仏教は理論的な教えで、それをかみくだいて理解し実践することが大切です。今の時代風に解説すると、「素直に聞く=情報を収集する」「まじめに考える=情報を整理分析する」「真剣に行う=情報を取捨選択し行動にうつす」この3原則が学ぶ上でもっとも基本となることで、生きる知恵でもあるんです。
人間は学びながら育ちます。そして子供を育てる、ということは人間がするべき行動の中で一番大切なこと。愛情をもって自分の子を育てる、地域の子を見守る、それが次世代を育てることでもあり、教育環境、ひいては4つの環境すべてを守ることでもあるんです。

 
法華経に学ぶ龍澤語録より
いしぶみ
甲府市法光寺にあるいしぶみ。「生きる知恵(=学ぶ時の心得)」を石に刻んである。

 
富士山
富士山は大地から天に向かって拝む姿。また、四方に向かって拝んでいる姿にも見える。富士山の標高は3776m。ゴロあわせ「皆、南無」「(ああいう姿に)皆、なろう」。お互いに尊敬しあう思いやりの姿の象徴だという。

 

2012年2月16日

石巻訪問

石屋団体・全優石の総会に出席するため、宮城に行ってきました。
毎年全国もちまわりで、石産地近くで総会が開かれますが、今年はあえて仙台となりました。
仙台は10年ほど前にも総会が行われたところですが、今回は人が集まることの経済効果を狙ったものとみえます。
 
2日目は松島と石巻へ。
松島は日本三景のひとつで、今はカキのおいしいシーズン。
なのに、観光客は激減、特に外国からのお客は皆無だそうです。
松島も浸水1m以上あったことが、待合室の写真ギャラリーでは紹介されていたけど、今では大きな爪あとは残っていないように見えました。
 
石巻は言葉を失う光景。
1年経っても倒壊したままのお墓。
地面は基礎までえぐられ、海の砂が入り込んでいます。
 
けれど、近年に施工したお墓はほとんど倒れてないことがわかりました。
土砂には埋まってるけど、傾きはみえません。
 
お墓が倒れるということは、長期にわたって心理的不安が続きます。
石屋として、精一杯のことをやるだけだ、と気持ちを引き締めることくらいしかできませんでした。
撮影させていただき、ありがとうございました。

2012年2月3日

尊いお仕事

ころころ通信9号ができました。
今回は奇しくも「教育」が共通のテーマみたいになりました。
小学校の話題2つ、環境学会の先生の話。

通信をまとめて置いていただこうと、今回取材させてもらった環境についての研究をしているT先生のところに行きました。
日蓮宗のお寺の住職さんでもあります。

アポをとらずにいきましたが、先生はこころよくお宅にあげてお茶を出してくださいました。
「この通信も、よくまとめられてますね」
とお褒めの言葉。
いろんな方々と繋がりになれるのが、わたしにとっても楽しいし、いいお話をきかせていただいたことを他の人にも聞かせてあげたい、石の魅力やお墓の大切さ、地域の情報、そんな情報発信が自分なりにできれば・・・
と熱く語ってしまいましたが、
そんな私の様子を静かに聞いていた先生、
「尊いお仕事ですね」と、とても愛情のこもった表情で言ってくださいました。

こんな言葉を使ってほめてくれる人、いるかしら・・・。
しばし感動で言葉を失いました。
尊いお仕事は先生のほうだと思いました。

今回の震災で何ができるか。
先生もとても心を痛められたそうです。
金銭的な援助はもちろん、被災地に実際に行って、支援活動もされました。
亡くなった人の中にはお葬式すらあげられなかった人がたくさんいます。
先生はそんな人々のために供養をささげてこられたそうです。
「それが私の仕事ですから。」

現代の日本は宗教心が相当薄れてきてしまってます。
でも、ただでさえストレス社会の現代。
心の安寧や救いを求める人は潜在的なものも含めるとどんどん増えていて、
ヒーリングだのアロマだのが流行り、カウンセリングや心療内科が求められてます。
こういうときこそ正しい教え、救われる言葉が必要なわけで、
本来、お寺はそういうものを与えられる素材がたっぷりあるはず。
キリスト教の教会はわりと普段から信仰になじみがあって救いや癒しの場みたいになってるけど、
お寺にもそういう役割を今の日本人は求めてるんじゃないでしょうか。

先日参加してきた「信州の山寺で写経にいそしむ」の会に若い女性もたくさん来ていました。
このお寺では奥さんが「てらーと」といってお寺で絵画や造形をするイベントを時折催しています。
絵を描いたり形を作ったりすることで脳が活性化され、自己表現や心の安定が図られるのだそうです。
高齢者や子ども、知的障害者にもとてもよい効果を生んでいるとか。

お寺を葬式仏教だけでない、もっと身近に感じられる場だといいなと思いました。
ということで、遅ればせながら、これから近所のお寺めぐりにも挑戦です。

2012年1月23日

石の穴あけにようこそ

「石に穴をあけてくれませんか?」
ホームページを見て、メールでお問い合わせくださった人が、今日来てくれました。

小石に6mmくらいの丸い穴を開けて、そこに磁石をうめこみ、石のマグネットを製作するのだそうです。

なんと横浜から。
てっきり近く(せいぜい県内)の人かと思っていたので、ちょっとびっくり。
でも、あちこちの石屋さんに問い合わせして、あまりにも小さい手間仕事なので、どこも断られてしまっていたそうです。
確かに、そうかもしれません・・・。
でも、クラフト製作のために、わざわざこんな遠くまで来ていただける、その熱意に感動。
それにおもしろそう。
石屋という仕事を知ってもらういい機会にもなります。

来てくれたのはこんな石屋にはめずらしい、若くてきれいな女性でした。
普段は会社員で、時間をみつけては樹脂でかわいいマグネットを作ってネットなどで販売しているそうです。
ホームページも教えてくれました。
comahawaiかわいい!ナチュラルな素材でこんなおしゃれなマグネットや画鋲ができるんだ!
このギャラリーにウチで穴を開けた小石のマグネットも並ぶんですね〜。
 
石 という素材は初めて、石屋の業界も全く初めて、というcomahawaiさん。
でも豆や貝殻を使った作品を見ていると、この人が石に魅力を感じたのも、とても自然な感じがしました。
きっと石屋とは違う感性で、石の魅力を引き出してくれると思います。
 
穴あけ終了。

薪ストーブを囲んでホームパーティ

薪ストーブ壁に大谷石を使ってくれた RAKAIA農場さんご自宅に招かれました。
薪ストーブを囲んでのホームパーティです。
 
薪ストーブができたばかりのときに写真を撮らせていただいて、今度のころころ通信にも載せるのですが、
やっぱり火を入れて、使ってなんぼの家具。
こういう生活感ある様子のほうが断然、魅力的です。
 
「そば打ちもやるよ」とは聞いていて楽しみにしていたのですが、
思いがけずMooが思いっきりハマりました。

粉をまとめて、こねて、のして、切って・・・
と一連の作業を熱心に聞いて、工程をほぼ覚えてしまいました。
Tazもこねる場では一生懸命ねんど遊び(?)してました。
週末の宿題の日記には、ほぼ覚えてしまった工程をつぶさに記述。
もともと本を読み出したらとまらない、など好きなものには集中できる子だとは思ってましたが、
いや、感心しました。
何より、そんな体験の場を与えてくださった、パーティゲストのそば職人さんとRAKAIA農場さんに感謝です。
子どもたちがこねる作業に使ったそばは、のした切れ端を集めて水を足したもの。
これもちゃんと切って、自宅で食べましたよ!
新そばのいい香り。おいしかったです。