施工例紹介〜自分らしさを「無」の字にこめる
「この字がいいね。何が書いてあるかわからないのが、自分らしい(笑)」
大きく篆書で「無」と彫ったA家の代々墓が完成しました。
自らが初代となる生前墓です。
「けっこうアマノジャクなほうだよ、私は。」
自らをそう評価するご主人ですが、それをそばで聞いている奥さんの表情は柔らかいものです。
「良くいえばマイペース、子供みたいなところがありますよね」
そんなAさんが建墓づくりの当初から決めていたことは、表字に「無」の字を彫るということでした。
仏教の思想にも通じる「無」。
あらゆる煩悩や欲求から解放された静かな心の状態を連想させ、大好きな言葉なのだそうです。
当店の親戚でもある愛知県の製作所を通じて、有名な書家・安藤豊頓氏に書を依頼しました。
楷書、行書、草書など数種類の「無」の字の中にこの篆書の「無」の字がありました。
「いいね。なんか人がふたり万歳してるみたいにも、相合傘してるみたいにも見える。」
「あなたらしい、変わった字だわ」
ご夫婦でも意見が一致しました。仲が好さそうに見えるほほえましい字です。
「別に仲良くもなかったけどな(照れ笑)、これからは仲良くするか。」
「無」の表字だけを大きく刻み、家名や建主名は一切入れませんでした。
「主張するほどの家でも人間でもないしな。そこは『無』の思想のとおりにいきたい」
石碑は茨城県産白御影の横型、
シンプルな一囲いのみのデザインの外柵。
でもその明るさと解放感は、「無」の境地を表しているようです。