おかみブログにデザイン墓石についてのご意見をいただきました。
せっかくいただいたご意見です。
他にも同じようなご意見を持っている方がいるかもしれないと思い、そのご意見についての返信もかねて記したいと思います。
参照:「楽しいお墓写真、撮り歩き」 (投稿日:2010-08-31)
いただいたご意見は、
1.「特殊なデザインのお墓を作るとき罪悪感はないのか?」
2.「普遍性のないデザインでは一代限りの使用となるのではないか?」
3.「一代限りのお墓が増えるのは環境破壊と使い捨て社会を加速させるのではないか?」
という内容でした。
ご意見に対して当店の考えを記します。
1.投稿者様が言う罪悪感とは、特殊なデザインのお墓が環境破壊につながるのではないかということについてだと推察しますが、
一方で伝統的な形でないお墓は文化を壊すという趣旨にもとれます。
環境破壊についての考えはあとで述べるとして、まずお墓の形についての基本的な考え方を記します。
デザインの違いによってお墓を建てる目的や意味が変わるとは思えません。
お墓は故人を追悼するための象徴物である、ということは古来より変わっていません。
しかし、お墓の形は時代により変わっています。
現在一般的と言われる三段のお墓が定着したのはわずかこの100年ぐらいのことです。
それも日本でだけのこと。
ですから、故人を偲ぶため、という目的の前にはお墓の形はどんなものでもいいと考えます
一方で、当店では仏教檀家の方には五輪塔をお勧めしています。
仏教で供養をするのなら仏教的にありがたいといわれている形で建てるのが”望ましい”と考えるからです。
そして、お墓の形は、石屋が勝手に決めて建てているのではありません。
建墓にあたって石屋側から五輪塔を含めていろいろな形を提案しますが、最終的に形を決め、建てるのは施主さんです。
その形が、”施主さん”が”故人のためになる”と考えて“お墓として“選んだものなら、デザインに良し悪しはないと考えます。
昔からある五輪塔は良い形で、最近考えられたデザイン墓は悪い形とは言えないでしょう。
2.デザインに普遍性があれば代々ずっと続くのか?と考えれば、そうとも限らないわけで、
そもそも目的が達せられれば、形に普遍性のある必要もないと思います。
代々続いてきた家、これからも続く家であっても、その家、その方の考えるその家らしいお墓を建てさせていただければうれしく思います。
ちなみに、おかみブログに載っている6軒のデザイン墓はすべて承継する子孫の方もおられる、代々墓です。
また、普遍的でない、といわれるほど突飛なものとも思えません。
特に当店で実績の多い「自然石タイプの碑石」は、日本人のお墓の原点ともいえる「千引石」を彷彿とさせるもので、ある意味最も普遍的な形と言えると思います。これは個人の感じ方によるとは思いますが。
ただし、お墓のデザインが子孫に受け入れられないといけませんし、田舎という地域柄も考慮し、あまりに具体的過ぎるデザイン(たとえば個人の趣味を特定するものの形とか)は当店としてはお勧めしていません。
故人に思い入れがあるほど、その人のために建てるお墓にも思い入れが生じるのです。
想う人のため、自分のため、子孫のためと考えた上でお墓に個性的なデザイン性を求める施主さんに、当店は喜んでデザイン墓石を提供します。
3.まず、日本ではもうしばらく死亡者数は増えていきます。しかし、世帯員数の減少、宗教感の薄れ、価値観の多様化、すでに家墓があるなどの理由から石のお墓自体は増えていくことは無いだろうというのが業界の見方です。
建墓されるお墓そのものも小型化しています。
投稿者さんの心配される採石による環境破壊は増えないと思われます。
また、世界を見渡してください。
石の採掘による環境破壊など、コンクリートを得るために削られる山、金属を得るために掘られる穴、道路や住宅を造るために埋められる谷、それらに比べたら建築に使われる石を含めてもごくわずかなものです。
量の問題ではないとしても、圧倒的に耐用年数の長いお墓の石は、材料として見ても車や家や他の製品より環境の破壊具合は低いはずです。
とはいえ、わずかでも1代限りの個人墓が増えればその分の環境破壊があるのは確かです。
しかし、人間の経済活動のすべては環境破壊の上に成り立っています。
1業種の小さな動向による影響に一人が意見するより、世界全体で進む発展による環境破壊についてみんなで意見し、行動し、意識を変えていった方が採石による破壊を含め環境破壊そのものを早く減らすことになると思います。
そして、使い捨てとはならぬようできるだけ良いものを必要とする方に引渡し、保守管理ついても助言しています。
ちまたでは10年で建て替えや大規模な補修を余儀なくするような工事をして「低価格で提供」とうたっている業者もありますが、それこそ環境破壊=「もったいない」と評価せざるを得ないことです。
なによりお墓は死者のためだけではなく、今の生者のためであり、未来人(子孫)のためであり、いつまでも家が世が栄えていってほしいとの願いを込めて建てるものです。
遺族の安寧と願いをこめたいつまでも残る仕事である建墓を生業としていることをありがたく感じます。
最後に、最も吉相のお墓とはなんでしょう?
それは、”お参りのされている”お墓です。