9号 2012年1月発行
対談・職人気質 -その道のプロにきく仕事へのこだわりとご先祖祀りについて思うこと-
第3回 「恨みは水に流し、恩を石に刻む」 〜龍澤泰孝さん〜
世界的にもユニークな公害問題に取り組んできた学識者が中心となって発足した、環境を考える会「日本環境会議」の会員でもあり、「やまなし環境会議」の会長。本職は日蓮宗法光寺(甲府市)の住職。他、里親会「きずな会」会長や甲府市国母地区子どもクラブ指導者協議会会長、保護司など多方面で活躍。
― 様々な場でご活躍の龍澤先生ですが、今回は「やまなし環境会議」の会長であるお立場にちなんで、現代社会で何かと耳にすることが多い「環境」をテーマに伺えますか?
私たち人間が幸せに平和に暮らすために欠かせない、「四つの環境」について考えてみましょう。一つめは「自然環境」。大地、空気、水に守られて私たちは生きている。さらに地球、太陽、宇宙。とてつもない数のことを昔の人が「有難い」と表現したように、この無数の星々がある大宇宙の中で私たちが存在するというのは表現しがたいほどありがたいことですよね。二つめは「社会環境」。ご近所、地域、学校、職場などの人間社会。お世話になりあって、共に生かしあって暮らす社会です。三つめは「家庭環境」。両親あっての自分、親の姿を見て育つ、人格形成の大事な原点です。四つめが「教育環境」。信仰も含む言葉や知識、教養を身につける場です。残念ながら、最近はこの四つの環境を破壊する出来事が続いている。福島原発事故は自然環境破壊の最たるものですし、通り魔事件の多発、親殺し子殺し…。「お金さえあればいい」「自分さえよければいい」という考え方の表れだと思います。
― 難しい問題ですね。破壊をなくす、減らす策はあるのでしょうか。
「自分さえよければいい」から「自他ともに栄える」という気持ちになることだと思います。そのために教育があるんです。学ぶこと。教育の目的はなんだと思いますか?教育基本法の冒頭、教育の目的の項に「人格の完成をめざし…」とあります。完成された人格を持った人って、仏教でいえばおシャカさまのことですよね。学ぶことによって相手を知ってその立場になって考えられるようになれば、おシャカさまに少しでも近づくことができる。「思いやり」の心を育てることが、学ぶことなのです。日本人はもともと「恨みは水に流し、恩は石に刻む」という思いやりの精神を持っているんですよ。
― 感謝の心が変わらないように石に刻むんですね。
時間と空間を越えて大切な人の魂を尊重するために石を使うというのは、古今東西共通しています。石はすごいですね。デジタル化が進んで、少し前のレコードやカセットなどの媒体は使えなくなってきているのに、石は何百年何千年も残るでしょう。こんなハードはどこにもないですよ。私が住職を勤める寺にも小さないしぶみがありましてね。法華経の教えにも通じる「学ぶときの心得・3原則」を言葉にして石に刻んであるんです。
― 「素直に聞く」「まじめに考える」「真剣に行う」3つの言葉が刻まれていますね。
仏教は理論的な教えで、それをかみくだいて理解し実践することが大切です。今の時代風に解説すると、「素直に聞く=情報を収集する」「まじめに考える=情報を整理分析する」「真剣に行う=情報を取捨選択し行動にうつす」この3原則が学ぶ上でもっとも基本となることで、生きる知恵でもあるんです。
人間は学びながら育ちます。そして子供を育てる、ということは人間がするべき行動の中で一番大切なこと。愛情をもって自分の子を育てる、地域の子を見守る、それが次世代を育てることでもあり、教育環境、ひいては4つの環境すべてを守ることでもあるんです。
法華経に学ぶ龍澤語録より
いしぶみ
甲府市法光寺にあるいしぶみ。「生きる知恵(=学ぶ時の心得)」を石に刻んである。
富士山
富士山は大地から天に向かって拝む姿。また、四方に向かって拝んでいる姿にも見える。富士山の標高は3776m。ゴロあわせ「皆、南無」「(ああいう姿に)皆、なろう」。お互いに尊敬しあう思いやりの姿の象徴だという。


北杜市武川町。
簡単にいえば、昔の寺社や民家の造り。無垢の木を手刻みして、釘やボルトを使わずに柱と梁を組む方法。木は木材になってもまだ生きているから、建ててからも組んだ木同士が少しずつからんで、なじんでいく。地震にも強いんだ。
国産の無垢材、極力地域材を使うようにしている。他にも壁は土、土台は石というように、自然素材を集めてる。
ゴミにならないからかな(笑)。家は住む人と一緒に育っていくものだから、ただ「使う」のではなく「活かす」ことを考えたい。職人の手仕事が見え、その材が育った地域が見える。それが住む人にとっても周りの環境にとっても居心地のいいものになるはずなんだ。そして何百年後か、使命を全うすれば大地に帰る。人間と同じだよ。
そう。日本が誇る木材と建築技術をちゃんと次へつなげる仕事をしたいと思った。
小淵沢駅前商店街の一角にある「ショップまちこぶ」。地元農家のおいしい野菜やお米、自然食品などを扱う直売所です。なるべく無農薬やオーガニックに限定した体にも環境にもやさしい食品がそろっていて、気さくなお店の人との会話も楽しく、つい立ち寄りたくなるお店です。その「まちこぶ」主催の味噌作り教室に参加しました。
講師はまちこぶ店長の太田さん。食品化学・栄養学のご専門で、食品関係の研究所に長年勤められたあと、無添加大豆で作った食品を製造販売するお店「だいずや(北杜市高根町清里)」を立ち上げた人です。今回の教室で使うのは清里産の大豆。大粒できれいな黄金色の極上品です。業務用の大鍋で煮てつぶして麹と赤穂の天塩を混ぜて貯蔵前の味噌だま完成。ここまではみんなで一緒に作るのですが、味噌のおもしろさはこれから。各家に持ち帰って貯蔵している間にそれぞれまったく違う味になっていくのだそうです。保管場所や密閉のしかたによるからなのですが、一番は愛情のかけかたが千差万別だからだとか。まさに「手前味噌」、こどもと同じなんですね。
「日本の大豆自給率は4%。すべてを国産でまかなうのはもはや無理。添加物や遺伝子組み換えの知識も知った上で受け入れていく覚悟も必要。だからこそ手作りは貴重です。これを機に食への関心を高めてほしい」食品安全モニターでもある太田さんの講義が身にしみる一日でした。まちこぶでは今後も保存食などの手作り教室を開く予定。お楽しみに!
周囲の山々に美しい歌声がこだまするように、という思いから名づけられた「エコーコーラス」は小淵沢を拠点に活動する混声合唱サークルです。平成21年に創立50周年を迎え、ますます充実。それを記念して平成22年の10月に50周年記念コンサートが行われます。
昭和34年、篠原の分校の女性教員有志の皆さんが中心になって、ママさんコーラスとして誕生したエコーコーラス。初代指揮者でもある進藤純世先生は、50年を振り返ってこう語ります。「仲間に恵まれました。子育てや仕事、病気で大変だったこともあるけれど、みんなで乗り越えてきた気がします」その言葉どおり、チームワークのよさが歌声に現れています。「年を経ても出し続けていれば声は出ます。生きている限り歌い続けたい」。
記念コンサートでは北杜市のために作曲家池辺晋一郎氏が書き下ろした壮大な合唱組曲「Yatsugatake(やつがたけ)」のテーマソングをはじめ、クラッシック、ポップス、童謡など世代を超えた幅広い曲目が演奏されました。時にすがすがしく、時にせつなく、また熱情的に。「平均年齢65才(メンバー談)」だからこそ表現できる様々な表情と深み。これからもますますの活躍が期待されます。
ラフターヨガって知ってますか?
「ひゃーくにんでわらいたい、せかいじゅうをふるわせて、わっははわっははわっはっは」の歌みたい。