おかみブログ

2010年12月30日

へその緒信仰

Kuhのおへそがとれました。
この、他人が見れば「こぎたない…」としか思えない黒いかさぶたのようなものが、
母体と胎児を結んでいるんですね。
だけどこれを大事にとっとく習慣があるのは日本人だけだとか。
へその緒信仰ですね。
日本人は実質的には意味のなくなった体の一部に象徴的な意味づけをするのが得意。
髪の毛をわら人形に入れて呪詛したり、
抜けた乳歯を屋根やら軒下に放り投げたり、
遺骨をことさらに大事にしたり分骨したり・・・
今回、お父さんがへその緒を切りました。
助産院の先生が「やってみろし」と勧めたこともあって。
直径1cmくらいのソーセージ状のそのホースは、思ったより弾力があって切り離すのに少々力が要ったとのこと。
「ほうずら。これだけ強い絆でお母さんと結ばれてるだよ。」
胎盤も、私は今回初めて見ました。
透き通った薄い膜に包まれた、フリスビーサイズのレバー。
けっこう存在感のある大きさの臓器でした。
グロテスク、といってもいいかも。
「きれいな胎盤だよ」と先生。
そういうことでほめられるのもなんだか奇妙な感覚ですが、うれしい気もしました。
切り取ったへその緒のホースもくっついてます。
これのおかげで、お母さんが食べたものが栄養素となって赤ちゃんに届けられ、
ぎりぎりまで赤ちゃんがおなかにいられ
血液型が違っても大丈夫なようになってるというわけか。
妊娠中最後のほうは重くて圧迫感が気持ち悪くて、同じ哺乳類でも有袋類はいいなぁ、などと愚痴ったものでしたが
これのおかげで、人間は高等生物になれたわけです。
ほとんどの哺乳類はへその緒も胎盤も出産後に親が食べます。
敵に跡を知られないように、処理するという意味もあったりするそうですが、
そもそもとても栄養のあるものだとか。
人間も、へその緒をせんじてのめば病気が治るとかいいますもんね。(日本人だけ?)
また、胎盤を素手で触っていると手がつるつるになるそうです。
コラーゲン効果?!
産院によっては産後の食事に味付けを施して食べさせてくれるところもあるみたいですが、
この助産院ではさすがにそれはありませんでした。
処分するためには医療廃棄物扱いで2500円がかかりますので、先生は一応「どうする?」と聞いてくれましたが、やっぱり食すのも持ち帰るのも遠慮しました。
生で自分のおなかに入ってた臓器が見れただけでも貴重な体験です。
産院でくれた桐の箱に、Kuhのへその緒を入れ、引き出しの奥にしまいました。
10ヶ月間、どうもありがとう。
へその緒1 へその緒2

2010年12月22日

カエデの木を植えよう

退院後あっという間に1週間。
のんびりさせてもらった入院生活とは北極と南極ほどの差で、
怒涛の日々が始まりました。
なんといっても、天敵は2才の姉・Taz。
「Tazちゃんのあかちゃん、Tazちゃんのあかちゃん」、と
かわいがろうとするのはいいのですが、
力の加減を知らないので、ひっぱるわ、たたくわ、ぐちゃぐちゃになでるわ、
おまけに保育園からもれなく風邪をもらってきて、顔の上でくしゃみやせきをするわ・・・
手伝いに来てくれていた実家の母(あかしばーば)は気が気ではありません。
私は「もーすきにしてー」という感じの域に達しつつあります。
さて、そんな中、名前も決まりました。
少し前のTazが、まだ舌ったらずで、「ジュース」も「牛乳」もおともだちの「しゅうくん」もみんな
「くーく」と言ってました。
だから、というわけではないのですが、新しい赤ちゃんの名前は「くーくん」になりました。
ブログでは便宜上「Kuh」と呼ぶことにします。
Kuhと退院した次の日、山積みになった郵便物の中から、まだ次に回してない回覧板を見つけました。
いつも適当に流して回してしまうのですが、
今回たまたま目に付いたお知らせは、
「ふるさとの山里に カエデを植えましょう」。
山梨県の木がカエデだそうですが、北杜市から希望世帯に無料でカエデの苗木をくれるそうです。
無料なら、ほしいな。
まあ60〜80cmの小さな苗木なのですが。
カエデといってもいろいろあって、山梨県の木としてのカエデがどの種類をさすのかわかりませんが、
たぶん総称としてのカエデだろうと思います。
この家を建てるとき、造園担当の恵風舎さんが植樹のデザインをしてくれました。
ハウチワカエデも植えるはずだったのですが、
落葉したときお隣にとても迷惑をかけそうだったので、断念しました。
でも何年か住んでみて、お隣の柿の木の葉もこちらに落ちてくるし(ウチはぜんぜん気にならない)、
落葉した葉も季節のうつろいを感じさせてくれるものだから、
そんなに気にしなくてもよさそう、ということがわかってきました。
今回Kuhの誕生と同時にカエデの木をもらえる、というお知らせが来たのも何かの縁。
子供の頃住んでいたカナダの国木でもあります。(種類は若干違うかもしれないけど)
そういえば昔は女の子が生まれると桐の木を植えて、お嫁に行くときたんすにして持ってきたとか?
男の子の場合にそういう風習があるかどうかは知りませんが、
Kuhの誕生記念に県の木カエデを植えよう!
どうか、ふるさとに貢献する人間になってくれますように。

2010年12月14日

さんばさま!


助産院の院長先生は愛すべきおばちゃん先生。
妊産婦と赤ちゃん、家族みんなに大きな愛情をそそいでくれます。
お産の後の母児にほんとうに必要なものはなにか、いつも考えていてくれます。
入院中は毎晩ショウガの足湯とオイルマッサージ、乳房マッサージ(激痛だけどめちゃめちゃ出る)、そして手作りの夜食。
きれいな設備や産後エステ、家族同伴のお祝いディナーより、全然実質的で気持ちのこもったサービス満載でした。
なにより細かい気遣いが直接信頼につながって、どーんと安心、マタニティブルーもどこへやら、という感じなのです。
今日の夜食もすてきでした。
「今日の夜食は もつれあ だよ」
夜、足マッサージをしてくれながら先生が言いました。
もつれあ?
半なまのモツ肉だろうか。
「パンにトマトとチーズどっさりのせてやる」
あー、モッツァレラ。
そして例のごとくそい乳で寝かしつけ自分もウトウトし始めた午前1時頃。ふつうに大声でだしぬくにドアが開く。
「ほれ、ピザトースト。今オーブンから出したばっかり。冷めないうちに今すぐ食えし。わかめスープはわかめ入れすぎちゃったからお湯足して。こっちはカモミールティー。ぐっすり眠れるよ」
ドーンと分厚いパンにモッツァレラチーズがテンコ盛り。ナイフでも切れないので、それこそなりふりかまわずかぶりつく。格闘したあげく、カモミールティーでほっと一息。やれやれ。
次の日はおしるこ。小豆を豆から煮込んだ本格家庭料理。甘味おさえてお餅もたっぷり。極ウマ〜。
もちろ食べ物だけに感謝してるわけじゃないんですが、この先生、偉大です。

2010年12月13日

母子整体


この助産院のもうひとつの魅力は、母子整体をしてくれることです。
私はもともと背骨がS字に曲がった側湾症の気があり、日頃の運動不足もたたって、前のお産は初期から腰痛に悩まされました。
骨盤のゆがみを矯正することが安産、産後の体型維持(できればもっとナイスバディにならないもんかしら)につながると知り、そんな産科を探したところ、好運にもこんな近くにあったというわけなのです。
院長先生の娘さんで助産師兼整体師のユキ先生が、詳しく教えてくれます。
妊娠中は腰痛肩凝り・早産予防のために適度な引き締めが必要、お産で最大限に開いて緩みきった骨盤に無理な運動は厳禁、適切な位置に骨全体を矯正しながら、回復を促す。矯正には正しい体操や手技が必要。
そしてベビー整体。よく「頭の形がいい」とか「向き癖がある」とか言われますが、実はその子の一生に関わる大問題。正しい姿勢で成長することが運動神経、能の発達、生活習慣病すべての基本なのだそうです。
赤ちゃんの抱き方、寝かせ方、動かし方の詳しい指導を受けます。
赤ちゃんをだっこして、母のスクワット。上下に動く感覚は赤ちゃんも大好きで、お母さんのトレーニングにもなって一石二鳥。
赤ちゃんの背骨をきれいなC字に保つ便利クッション。安心できる姿勢なので赤ちゃんもすやすや。前の産院では固い陳列台の上に仰向けで寝かされていたのがいまさらながら心配になるほど。
「歪んだ体は不利です。逆にきれいな姿勢の子に育って、ウチの産院から有名スポーツ選手とか出てくれるといいですねー。」とマジメに期待するユキ先生でした。

2010年12月12日

オリオン・ボーイ


9日夜、オリオン座が低く東の空に輝きだした頃、出発。
弱いけど定期的なおなかの収縮が感じられたので、一応連絡して検査のつもりで産院に行きましたが、
夜半過ぎ、にわかに痛みが強くなったと思ったら、夜中の2時頃あっという間に生まれちゃいました!
オリオン座の強さに導かれた、男の子!
前の2人が丸一日と、長くかかったことを思えば、異例の早さです。
経産婦ということもあるけど、これはやはり助産院指導の骨盤ケアが効いたんじゃないでしょうか。
骨盤に歪みがなく、上手に産道を降りてこれれば安産になるとのこと。
それにしても陣痛って不思議なもの。
痛くないときはほんとになんでもなくて先生からのさし入れのおにぎり2個だってぺろっと食べられちゃうんだから。
「そうだよ、赤ちゃんがこのホルモンをつくるの。これつくらせないで、促進剤で産まれた赤ちゃんは成長してからどっか安定しないんだよ」確かこんな説明だったような。
「それにしても、あんた、体調管理は満点の妊婦さんだったね。その調子でなりふりかまわず食べときな。お産は体力使うだから」
出産後まる一日は誰とも会わずとにかく横になってろ、との指令。疲れたけど気分爽快、フルマラソンを完走した気分ってこんな感じなのでしょうか
三度の食事がなにより楽しみ。
ボリューム満点の古典的なスタミナ食を一粒残さずきれいに食べ切ります。
これで乳ださなきゃただの食い逃げだ。
だけど先生、「心配しなんでも、あんた、出るよ。だけどミルクをやるのを罪悪感感じちゃだめだよ。忙しい時は便利な道具だから。上の子たちの相手もしてやんなきゃいけないしね。」この言葉には救われます。
2日目の夜はショウガの足湯とお灸をしてもらいました。
夜中、何度目かのおむつがえと授乳のあと、ようやく母子ともうとうとしかかったとき、突然先生のマイペースな大声が。
「ボタモチ食うけ。あたしが作っただ。おっぱいやってるとおなかすくだよ。」夜食と呼ぶには少々夜更けすぎる午前3時。この先生、いったいいつ寝てるんだろう。
でもすごく嬉しい。確かに7時の夕食から 8時の朝食まで何もなくて、その間ゆっくり寝てられないんだからお腹がすきます。
明日は夜食用のパンでもお父さんに買ってきてもらおうと思ってたところ。
手づくりのほんのり甘いボタモチがどれだけありがたいか。しかも梅干しとおすまし付き。
「どうでも食わせようっつうだから、迷惑な話だよねぇ、ガハハ。けどうめぇぞ、食っとけし。(赤ちゃんに)おい、うるさくしなんで、おりこうでいろし」
こんな調子で助産院でのつかの間の休息と赤ちゃんとの蜜月を楽しみます。

2010年12月5日

武蔵野

突然。
国木田独歩を読んでいる自分が夢に出てきた。
くにきだどっぽ?
30年以上その単語を聞いたことがないような気がする。
中学か高校の歴史の授業かなんかで耳にして以来かもしれない。
深層心理というのはわからない。
大して読書家でもない私の夢に、なんで、そんな作家が急に出てきたのだろう。
明治時代の作家、ロマン派〜自然主義。
漱石や芥川からの評価も高い、らしい。
・・・なるほど。
「坂の上の雲」のドラマをつけていて(マジメにみてなかったけど)、正岡子規とか出てきたから、近代日本文学というおおざっぱなつながりで思い出したのか・・?
とにかく突如そんな作家が脳裏によぎったので、
もしかしたら「出産前の、この時期のおまえが読んでおくべし」と、
これは何かのお告げかもしれないと思って、
さっそく図書館へ借りに行くことにした。
「武蔵野」、「源おじ」、「忘れえぬ人々」・・・・。
短編が多いので比較的すぐ読めそう。
なるほど、「武蔵野」の秋から冬にかけての雑木林の記述は、まさに八ヶ岳に住む私が同じ季節に感動するシーンを限りなく詩的に表現してくれている。
私も武蔵野市に住んでいたこともあることだし(現代は独歩の時代の面影は皆無だろうけど)
季節感を十分に想像、回想しながら、ラストスパートを楽しむことにしますか。