「たらまい」のルーツを追え
昨日のハナシは山梨に来て久しい人、あるいは地元の人にとってはたいしておもしろくもない、当たり前のことでしたが、今日のお題は地元の人はほとんど知りませんでした。
和太鼓会のリーダーからこんな宿題を課されていました。打ち上げの宴会の席です。
「やよぶさん、『たらまい』って知ってる?」
名詞?動詞?形容詞?
リーダーは昔から自分のウチでは使っていたので甲州弁だと思い込んでいたようですが、地元でもけっこう知らない人が多いということに気づき、ギモンを持ち始めました。
宴会の席での料理を前にして「たらまいほして」という使い方。
「ほす」は「干す」つまり「片付ける」、「たらまいほして」で「遠慮しないで全部食べていっとくれ」という意味を表すそうです。
ということは「たらまい」は「料理」を差すということになりますが、なんでそんな言葉を使うのか、リーダーにもわからないとのこと。
「やよぶさん、ちょっと調べてみてよ」
リーダーはニヤニヤしながら言いました。
さて、ネットで甲州弁サイトを開き「たらまい」を探してみましたが、全く見当たりません。
白くておいしくて昔は手に入りにくいご馳走、ということで「鱈米」と当ててみましたがそんな造語も見つからず。
甲州弁ベタベタのド地元衆に聞いても「知らない」と冷たくあしらわれ。
どうやら甲州弁ではなさそうだというところまでたどりついたものの、なすすべもなく困っていたところ、意外なところからヒントが舞い降りてきました。
わが出身地明石で、2月末にいかなご漁が解禁になったとのこと。
春ですねぇ。
いかなごは稚魚4mm→新子3cm→成魚8cmと成長する浅海に生息する小魚で、明石海峡産は品質もよいと有名です。新子の頃が一番おいしく、よく出回り、生姜とざらめと醤油で甘辛く煮た「くぎ煮」は早春の明石の名物です。
明石の天然の鯛などは、なかなか庶民の口には普段のぼりませんが、このいかなごのくぎ煮はおかあちゃんの味として広く親しまれています。
・・・と前置きが長くなりましたが、そのいかなごや明石の新鮮な魚を販売する「うおんたな(魚の棚)」という魚市場があります。
「棚」は「店」を意味します。
また市場を「台所」と表現することも。
もしかして「たな」がなまって「たら」になったのでは。
そういえば太鼓メンバーの別の人が言ってました。
「俺はたなまえ干してって聞いた気がするな」
で、「たなまえ」で調べたらステキなサイトを見つけました。
富山弁ゼミナール
ズバリ、「たなまえ」が「台所」の意味でつかってあります。
日本海側のお国言葉が何らかの流れで(おそらくはかなりローカルな個人的ルートで)この山梨に入り、少しアレンジされて「たらまい」になったのではないでしょうか。
そういえばかのリーダーの家は寿司屋。彼は仕入れの関係で日本海側のこの言葉と出会ったのかもしれません。
「台所の食材ごとぜーんぶ食べてっとくれ」
なんだか気前のいい表現で、嬉しくなってきますね。
さて、上記の考察、真相はいかに。