おかみブログ
2010年3月26日

じゃがいも博士

ある大手食品メーカーに長年お勤めだった人のお話をききました。
ジャガイモの契約農家をまわって、品質向上と安定供給に仕事の半生をつぎ込んだ人です。
ジャガイモに対する愛情と熱意が奥の奥から伝わる時間でした。
以下、その人といただいた資料のウケウリ。
◆◆◆
ジャガイモは庶民的で強いというイメージがある。
土の中から掘り出されるという素朴感、いつも市場にあって価格も安いという身近さ、澱粉・たんぱく質・ビタミンCが豊富という栄養価の高さ、飢饉のときや荒廃した土地でも比較的すぐ作れるという手軽さ。
じゃがいものない生活は考えられないし、そのまま食べるだけでなく澱粉などを利用した加工食品になってたりする。
だけど、ジャガイモ本来の性質はきわめて病気に弱い。
ウイルスや細菌にやられやすく、病気に冒されたジャガイモは極端に収量が減って味が悪く栄養価も低いものになってしまう。
おまけに自家採取(自分の畑でとれたイモを種にして植えること)が難しく、無理にやろうとすれば必ずといっていいほど上のような状況に陥る。
自家採取を3代もやれば、ほぼ100%病気に。
しかも土も汚染されて二度と良質なジャガイモ栽培ができなくなってしまう上、末代まで迷惑がかかる。
だから種イモは国のもとで、徹底的に管理されている。
管理された種イモは消毒体制がしっかりとられている。
作物としてのイモは輸入禁止。(ジャガイモだけでなく土のついた植物全般輸入禁止。)
ポテトチップスの原料が100%国産なのはそういう理由から。
既に江戸時代アンデスから回りまわって日本に入ってきたころから自家採取を続けると収量が落ちることが知られていた。
そのため農家は種イモ用のイモは低温管理されたところで別に作っていたという。
自家採取もできないほどの繁殖能力の低い作物を、さらに品種改良が繰り返されて、固体としての生命力は失われた。
それが、スーパーに通年並ぶ、おいしいイモの正体である。
◆◆◆
これはちょっと衝撃でした。
つまり。
農作物作りで「無農薬無施肥」は理想だが、ジャガイモに限っていえば、完全無農薬はほとんど夢物語。
よしんば丹精こめて土作りをして消毒せずに育てたところで、もとの種イモは薬漬けになっているというわけです。
もちろん、家庭菜園でジャガイモづくりをして、取れたイモを次の植え付けにまわす、ということをして「ちゃんとできたよ」という人もいます。
世の中には「無農薬」をうたったジャガイモ商品も出回っています。
だけどものすごいコストをかけたあげく病気にかかって、収量が少ない、栄養価の低い、味の悪い、そんなジャガイモが果たして価値のあるものなのか。(ウチのはそうじゃない!という人もいるでしょうが)
私は必ずしも無農薬じゃなきゃイヤという主義でもないから、栄養価が高くておいしくて安いジャガイモが開発されたことにも、やっぱり感動を覚えます。
そうは言ってもその人は、家庭菜園でジャガイモや他の野菜を育てています。
目標はおいしい野菜をできるだけたくさん採ること。
50坪ほどですから、人の手でできることはやって、なるべく薬剤処理は抑える。
土はわらや堆肥をまぜて何年かかけてつくればいいし、テントウムシなどの害虫は指でつぶせばいい。
それでも昨年みたいに雨が多くて病気が発生したりすることもある。
そしたら「今年はダメだった〜」とあきらめる潔さも大事。
そんな風におっしゃる姿がとても自然体で、無理がなくて、魅力的に見えました。
お話のあとはむしょうにポテトチップスが食べたくなって、3袋ほど買い込みました。
0326ポテトチップス