おかみブログ
2007年2月5日

そば屋地獄

以前八ヶ岳は「パン天国」だと書いたことがあったので、それをもじって今回は「そば屋」について。
少々辛口なので「地獄」としておこう。
小淵沢スパティオからリゾナーレ近辺はここ数年で開店した飲食店が、文字通りずらりと軒を連ねるところ。
その一画に昨年またそば屋がオープンした。
「また」と、かなり失礼な言い方をせざるを得ない。
なにしろそば専門店は小淵沢IC付近半径1km以内で私が知っているだけでも既に4軒、そのうちの3軒はここ数年以内にオープンしたばかり。
品書きのひとつにそばがある店を含めるといったい何軒になるのかわからない。
さらに、半径10km程度なら「車ですぐ」というこのへんの距離感を考えると、富士見から高根に至るまで、八ヶ岳南麓に近年オープンしたそば屋の数は計り知れない。
公共施設や三セクでは必ずといっていいほど「そば打ち体験」を催している。
まさにこの数年、「そば」ブーム・・・というより「そば屋開店」ブームなのだ。
人口5万人の北杜市において、あきらかに過剰ではなかろうか。
当然競争も激化する。
さて、くだんのそば屋。
紅葉の並木とカラマツ・アカマツ・白樺の林に囲まれた一画に強烈なインパクトでその姿をあらわした。
この高原の林をバックに鮮やかすぎるショッキングピンクの外観。
建築途中、私はここを何度か通り過ぎる際、この色が完成形でないことをひそかに願った。
それが洋食屋などではなく、そば屋であることがわかったとき、憤りに似た感情すら覚えた。
「なんで、そば屋が、ここに、こんな色で・・・」
色んな建物がひしめき合う都会ではさほど気にならないかもしれないが、ここは自然豊かな八ヶ岳。(それでも少しずつ破壊されつつあるのだけど)「景観に合う」というのはとても重要なファクターなのだ。
ということで、オープンして半年、食べ歩きオタクの私にしてはめずらしく、意図的に敬遠していたのである。
先日同僚とこの店の話になった。
「ほら、競技場の前のあのおそば屋さんだけどね、」
「あー、あのすごい色の。」
「またそば屋、ってかんじよね」
「ところが、けっこう車停まってるのよ、いつ通っても。」
客が入っている、という噂を聞くと、興味を引くのが人の心理。
よく知りもしないうちからウダウダ悪口を言うのはよくないというのを口実に、勇気を出して入ってみることにした。
飲食店が流行る条件はいくつかある。一般的なものは
1)わかりやすい立地にあること
2)目にとまりやすい外観をしていること
3)店内が居心地がいいこと
4)接客がいいこと
5)味がいいこと
6)値段がリーズナブルなこと
7)特徴がはっきりしていること
特に4は重要だ。
ターゲットは右も左もわからない観光客か、グルメな別荘客か、少し遠巻きに見つめる地元客。
このどれをないがしろにしても八ヶ岳での商売はなりたたない。
マニュアルトークではなく、それぞれの客にあったもてなし言葉が必要だ。
おそるべきことに、このそば屋は上記の条件をほぼ全てクリアしていた。
そばはコシと風味があって旨い。
そばきりと野菜天ぷら盛り合わせで1500円だが、観光地だからこんなもんだろう。
ジャズが流れ、薪ストーブが燃える。
カウンター席で一人静かにいただくこともできれば、テーブル席で家族の食事や和室での宴会にも対応できる。
そして一人で入ったジョセイ客にさりげなく話し掛けてくれる。
正直、この接客ひとつですべてがリベンジできるほど、重要なポイントだと思う。
その話し方がとても自然なので、こちらもつい素性をあかし始める。
地元だとわかると「じゃあまたいらして」とデザートのサービスをしてくれた。
2才の子供がいるというと「ぜひご家族で」と快く受け入れてくれた。
これはかなりポイントが高い。
八ヶ岳のこだわりそば屋とやらは臆面もなく「お子様お断り」と書いているところも少なくないからだ。
うちの娘はそばが大好きなのに、親も子も満足できる店は限られる。
おかあさんと息子さん夫婦の家族経営。
そば打ち担当は息子さん、戸隠で修行したそうだ。
汁そばは京都で。だしのきいた薄口しょうゆ味は都人も満足させる。
天ぷらは全国修行の旅の折、あちこちの天ぷら専門店で伝授してもらった。
手作り甘味メニューも充実。
店を出るとよい天気の昼さがり。
振り返って改めて見ると、ハデな外装も少し落ち着いて見えるから不思議だ。
祥香2 祥香1 ←そばきり祥香
今回は気分的に「である」調のエッセイ風に書いてみました。
えらそうでごめんなさい。