おかみブログ
2007年2月24日

棺の前で

学生時代の先輩の訃報を知り、横浜・長津田へ。
ホールが4つもある大きな斎場で「○○トメ」さんとか「○○△蔵」さんのお通夜会場と同じ並びで、39歳で逝った先輩の遺影が青白い照明の下できれいな花に囲まれていました。
遺影の目線は正面ではなく、少し斜め下あたりを見ている感じで、おそらく数年前の結婚式のワンシーンだろうと思われる和装姿で、自然な表情だけどいつもよりりりしく、写っていました。
同期同士の結婚なので、奥さんもよく知っていますが、焼香台からかなり離れた奥のほうにいらして、なんとなくこちらのほうに目を向けられましたが、表情はよくわかりませんでした。
この先輩とは上京してからも時折会う機会がありました。
学生の延長で、他の同期や先輩たちも含めて、まだまだバカ騒ぎしたりしていました。
身長も横幅もある体格で、ちょっとオタクな趣味の混じった博識家で、一緒にいるととても安心したほがらかな気分にさせてくれる人でした。
ドラえもんのような丸い手を口元にもっていきながら、ひょうきんに話をするしぐさがなんともかわいいものでした。
遺影の顔はあまり見たことのない表情でした。
そうか、ちゃんとしたシーンではこういう顔もするんや、ちょっとかっこいいな、と今日久しぶりに会った仲間と話しました。
もうお経も終わり、遺族の人たちは控え室に入っていました。
「デカいヤツやったのに、こんな狭いところに入れられて・・・」とある人がいいました。
焼香台の後に、花にまぎれるように棺がひっそりと置かれていました。
ここには先輩は居ない、という感じがしました。
私のお墓の前で 泣かないでください
そこに私はいません 死んでなんかいません

魂がからっぽの棺の前で、私たちは先輩への思いをめぐらしました。
棺の中に先輩はいないけど、私たちの会話の中では生きていました。
こういう会話が上る場所が、先輩のいるところなんだろうと思いました。
棺や墓石自体には意味はないけど、その前にいることで、純粋に神聖な気持ちになれることもあるかもしれない。
今日集まった昔の仲間は10人。(告別式のほうはもっと来るはず)
「こういう集まり方は、きっかけがちゃうやろ。」と嘆きつつも、この集まり自体が確かに故人が存在した証でもあるのでした。