雛人形
雛人形を出しました。
Mooが生まれたとき、大手の人形店に行ったことがあります。
最近のものは現代人の好みにも合うステキなお顔のものが多く、
小物や衣装もシックで、色あいを統一していて、幻想的な世界観を作り上げていました。
なかでも夜の浜辺を舞台にしたシックな青基調の衣装で動きのあるポーズをした一対は
源氏の君と明石の姫を思わせて私も夫も思わず見とれてしまいました。
「いいねぇ」と言いながらカタログだけもらってきたこともあったのですが、
何十万もする人形は我が家には高嶺の花。
その後ふとしたことから出会った人形師さんのこのお人形にすっかり心奪われてしまいました。
なんともひょうきんで、愛らしくて、単純な形なのに味わいがあって。
秋田の田沢湖を拠点とする劇団、わらび座の元団員糠谷啓三さんの作です。
糠谷さんはご主人が舞台美術などの裏方、奥さんが役者でした。
今は山梨と静岡を結ぶ富士川街道(現国道52号)沿いの鰍沢町で隠居暮らしです。
退団後、ご主人が人形づくりを始められました。
鰍沢町の古い小さな民家を買い取り、せっせとご自身で改修、屋根裏部屋を人形制作のアトリエにされています。
仕事で出会った方ですが、その人形たちの表情が忘れられず、娘の雛人形製作をお願いすることにしました。
以来、年1回の個展の案内をいただいたり、年賀状やわらび座のご案内をいただいたりして
おつきあいが続いています。
茶目っ気のある笑顔で、齢70を越えるのに少年のように目がキラキラしていて、
でも伝統を重んじる糠谷さん。
「芸能っていうのは日々の生活から生まれているんですよ。
網をひっぱる漁師の動きがソーラン節になったり。
そういう根っこをいつまでも残しておきたいですね」
夫が台を黒御影石で作りました。
人形師さんの人間味が現れた、大事な家宝です。