おかみブログ
2006年7月14日

一物全体

4/266/166/22のブログでもおなじみのウコギ博士の哲学論をまた拝聴してきました。
始まりは昨日のNHK朝の連続テレビ小説「純情きらり」ネタ。ドラマでは、八丁味噌の統制価格が原価割れする値に決まり、職人の一人が安い大豆を購入する契約をしたところ、ヤクザみたいなチンピラ商人の持ってきた大豆は脱脂大豆だった。「こんなもん、格調高いうちの店で使えるか!」と職人頭。当の若職人はクビになり、店はクズものを買わされて大損。「捨てるしかないか・・・」と肩を落とす大女将に主人公の若女将が提案。「これで味噌を作ってみましょうよ!あるもので工夫するって、料理や商売の基本ですよね。」
脱脂大豆とは大豆の油分をとった後のたんぱく質。油屋や味噌屋、豆腐屋などからすれば残りかす。
でもウコギ博士は残ったほうもまた宝だ、と言います。
大豆の油分をとった脱脂大豆、豆腐を作った後のおから、玄米を精白したあとの糠や胚芽、石を磨いた後の石の粉。
彼にとっては一般的に廃棄物とされるものを活用して付加価値をつけることが、研究の目標でもあり、楽しみでもあるようです。
ということで、今日のドラマはまさにツボにはまったようで、「そうそう、さくらちゃん。(主人公の名前) 脱脂大豆だって使い道あるんだよ、と言いたくなりましたよ」と嬉しそうでした。
そんなこともあって、脱脂大豆がどのように製品化されているかを調べてみました。
(便利な世の中です。ネットで基礎的な情報はすぐ入手できてしまうのですから。)
醤油などの醸造食品には今や原料に脱脂大豆を使うのは一般的なようです。
醤油ではここのページがわかりやすかった。北伊醤油・醤油の豆知識
だからわざわざ「丸大豆醤油」などととうたっているのですね。
それから今はアレルギー表示つけなくてはいけないことになっていて、「原料の一部に大豆を含みます」という一文は一見「どこに?」と思うような食品にまで広く使われていたりしていますが、その正体の多くは脱脂大豆粉です。とろみやつなぎに使われています。
一方で職人と言われる人々は、あるものからいいところだけをいかに純粋に抽出するか、の技に神経をかけています。いい例がダイヤモンドで、ダイヤの原石である炭素結晶を特殊技術で磨きに磨きをかけ、ほんの一部分だけを抽出したものがそれです。御影石もいい磨き方をすればするほど艶持ちもよくなり、特に墓石など長期にわたって存続するものについては、素材自体の質に加えてこの磨きの技術が大きく品質に左右します。そういう技術は人類の文化向上にとても大切です。が、その高度な技の過程で出る副産物については、あまり考えていられないのが現状です。
石の磨きや醤油などの加工食品とはもちろん違う次元のハナシですが、マクロビオティックで提言する「一物全体」は食物をまるごと全部いただきましょう、という考え方です。玄米も野菜の葉もねっこも皮も、アクも粕も旨みのうち。
米ぬかだけ食べろ、といわれてもなかなかキツイものがありますが、おいしい部分も一緒に食べるなら相乗効果で、いいところだけを食べるよりおいしく感じるものですよね。
さて、今回のブログ執筆はモノを分ける分けないのよしあしを決めるものではなく、いろんな観点があるよ、というウコギ博士のシメに共感したからです。「観点の転換(かんてんのてんかん)」という言葉あそびのような彼の哲学を実生活にあてはめると、意外といろんなことうまくまわるかもしれません。