伊達冠と出会う
石屋のおかみをしていると、普通は行かないようなマイナーな場所に旅行できるのが醍醐味のひとつです。
夫の石材製品買い付けに私もついていきました。
昨年9月の岡崎に続き、今回の旅行は福島。
福島と聞いて一般的に一番イメージしやすいのは会津の磐梯高原・猪苗代だと思いますが、私たちが行ったのは福島の北東・伊達市霊山町(りょうぜんまち)です。
阿武隈川と独特にそそりたつ崖のような霊山という、雄雄しい自然に恵まれたところで、紅葉のシーズンがひときわ美しいそうです。
福島は県内のあちこちで良質の白御影がとれ、近県・宮城の黒御影や栃木の凝灰岩の産地にも近いことから、石材業者が多いのです。
今回行った霊山町の石材問屋もそのひとつ。
やはり墓石の展示が主。東北の墓石は八ヶ岳と似て黒が多いです。
今回の最初の収穫は蔵王石。
黒っぽい安山岩で、八ヶ岳の好みにも合いそうです。
安山岩はごろごろとした岩で採れるので、その自然な形を活かして表面の広いところだけ本磨きにして、側面や背面は岩肌を残すような加工をするのが合います。
今回仕入れたのは墓石ですが、田園の中に建てる記念碑などにも向いています。
今回仕入れたもの。
もうひとつ、私が気に入った石があります。
伊達冠石(だてかんむりいし)。
これも安山岩のひとつ。
岩肌はまっ黄色ですが中は濃い灰色、磨いたばかりの面はほとんど黒に近い濃い色です。
これが数年経つと赤茶色に変色するそう。
そんな短期間のうちに変化するという特性をわかってくれる施主がどれだけいるか、という点で、夫は今まで敬遠してたとのこと。
でも、岩肌の黄色と磨き面の黒のコントラストはほんとに美しいものでした。
加えて、やはりこれもゴロ岩で採石されるので、自然な形を活かした、アーティスティックな加工が魅力的です。
伊達冠石の小さめの墓石セット。
展示会場を見終わった後は郡山市内の霊園を見学に行きました。
伊達冠石の墓石を見つけました。
自然な風合いで、とてもステキです。同じ石でベンチも作ってありました。
ちょっとお邪魔させていただきました。
伊達冠石で全面本磨き加工にするとこんな感じです。
これが数年経ったもの。
確かに赤茶けていますが、上品な色合いだと思いました。
こういう風に変わるということをちゃんと説明した上で、真っ黒ではないものを好むお施主さんにはこれを勧めてみれば、と言ったら、夫も納得したよう。おかみの意見、聞いてもらえました。