仙人小屋で念願のキノコを
紅葉まっさかりの八ケ岳高原道路。
山小屋食堂「仙人小屋」へ。
「田舎暮らしの本」12月号にお店を掲載するにあたって、取材協力で携わりました。
女将さん・通称「天女」の明美さんとは、いっとき和太鼓をご一緒したこともあります。
あの笑顔に会いたいのもあって、久々に先日訪れたのですが、
取材時はお食事をいただく間がなく、その後思いがつのっていたのです。
今日は少し仕事もありますが、内心は食事目的。
カウンターに座り、お目当ての「キノコ天ザル」を注文。
キノコの天ぷらとザルそばのセットです。
ところが、厨房の奥で忙しく料理をしているオーナー・通称「仙人」が一喝。
「やめときな。体に悪い」
仙人は一見とてもガンコそうです。
自分のポリシーがしっかりあって、人にも(お客にさえ)とても厳しい。
ちょっとこわそうな印象すらあります。
山を極めるその視線の奥から人を見つめるとき、下心があってもすぐ見破られそうな。
まっすぐ真剣勝負しないと相手にしてもらえない。
そんなお人柄のように感じます。
そんな仙人が厨房の奥からつぶやくように、でもしっかりと、忠告を出したのです。
何が体に悪いのか、一瞬びっくりしました。
「で、でも、今日はキノコてんぷらを楽しみにしてきたんです・・・」
「家であんまりできないもんねぇ。わかるわ、主婦としては」
と明美さんもフォローを入れてくれます。
(実はウチでは揚げ物はけっこうするのだけど)
どうしよう、ほんとに注文内容変えたほうがいいのかな。
ドキドキしながら不安げに待つこと約20分。
ちゃんとキノコ天ざるが出てきました。
よかった。
からっとした衣に閉じ込められた旨み。
私の中でキノコ料理の定番といえばやっぱりこれなのです。
仙人小屋のキノコ天ぷらは量の多さで有名です。
十数個のキノコ。全部違う種類です。
数年前にこれをいただき、まず目で圧倒され、深い山の味に舌で感動したものでした。
でも、これだけの量のてんぷらを一度に食べるのはキツイ。
ということはお店も承知してるのか、普通に持ち帰りパックを出してくれました。
今回もこの場で全部食べきるつもりはなく、ひそかに持ち帰り容器を持参していました。
家族へのお土産に。
これで安心して好きなだけ食べられる。
こういう行為も実は仙人としてはあまりうれしくないのかもしれない。
でも他の人も必ず持って帰ってます。
山の幸は神様からの贈り物。
仙人を通してその恵みを分けていただくという謙虚な気持ちになることが、
仙人小屋でお食事をするときの最重要心構えなのです。
(どんなお店でも大事ですけどね)
「体に悪い」といったのは、妊婦である私への仙人の気遣いだったのでしょう。
お腹が大きくなってくると胃が圧迫されて消化機能が弱まり、
胃もたれ状態が続きます。
油ものや刺激物をとりすぎると特に、胸やけが強まることも。
仙人としては、万全の体調のときに、最後までおいしく食べて欲しかったにちがいない。
ごめんなさい。
でもお土産の天ぷらは夕食に再びおいしくいただきました。