おかみブログ

2007年2月21日

大谷石のふるさと

栃木県宇都宮市郊外の大谷町(おおやまち)を訪ねました。
ここはその名もズバリ大谷石(おおやいし)の産地。
大谷石は、日本で最も一般に名の知れた石種といってもいいでしょう。
凝灰岩の一種で、大谷町でしかとれないのでその町の名をとっています。
ワインのボルドー、発砲ワインのシャンパンみたいなもんです。(?)
独特の青緑の地に渋茶色の斑で、石でありながらとても柔らかい風合いを感じさせます。
耐火性・調湿性・防腐性を誇り、加工もしやすいことから日本の建築市場では欠かせない存在でした。
大谷町ではいたるところに大谷石で作った建築が見られます。
大谷3 大谷4 
大谷5 大谷6

いいですねー。やはり産地はこうでなくっちゃ。
石のお蔵なんて贅沢だと思いますけど、昔はブロックより安かったから、それこそ湯水のように使ってたみたいです。
大谷町の観光スポットのひとつ、大谷石の山ごと切り出してつくった「大谷観音」と「平和観音」です。
「大谷観音」は平安時代に弘法大師によって彫られた洞窟内の壁面彫刻。日本最古の石仏だそうで、国の重要文化財なので撮影は禁止。
「平和観音」はコチラ↓
大谷10 大谷1
27mもの巨大な石像です。第二次大戦後、平和を祈願して造られました。
肩の向こう側に公園があり、そこまで登っていけます。
娘はかなりインパクトがあったらしく、帰ってきてからも「おおきいかんのんさまみたの」としきりに話していました。
ところがこの観音像のすぐ近くで悲しいものを発見。
一見映画のロケ地にもなりそうな神秘的な石の崖の間を入っていくと
大谷7 大谷8
奥のほうに粗大ゴミが捨ててありました。
ひどい・・。
大谷町のもうひとつの見せ場、「大谷資料館」。
大谷9

採掘場を開放した巨大な地下空間です。
資料館なので今はもうここでは採掘作業はしていません。
大谷石は年代順に斜めの層となって地中の奥まで分布しており、採掘技術が進んでくると石材として利用価値のあるものを求めて横へ奥へと掘っていったところ、このような地下空間ができたのです。
迷路みたいに縦横に採掘現場が広がっていてまるでカタコンペのようです。ところどころ、地上の位置を知るための天窓のようなものがあって、そこからわずかな光が入ってきます。もちろん今は照明がありますが。
光が当たらないうえ、石なので熱が伝わりにくく、気温はほぼ一定。夏はひんやりしていますが、冬は逆に外より暖かい日も。
ただしこの日は外がぽかぽかと春の陽気だったので、寒く感じました。
一定の温度を利用して戦中の兵器庫、戦後の食品庫としても使われました。
今では音の独特の広がり具合を利用してヒーリング・環境系の音楽のコンサートが開かれたり、神秘的な空間を活かして結婚式場にもなったりしています。
ちなみに娘はここが心地いいのか、はたまた生気を奪い取られるのか、地下室に入るなりぐったりと昼寝タイムに入ってしまいました。
大谷12
太古からの歴史と人の暮らしが見て取れる大谷町。
海外の安い石材や人造建材におされ、寂れた感は否めませんでしたが、だからこそもう一度探訪に来たいと思える街でした。
次は娘が小学生になって、夏休みの自由課題ネタがほしくなったら、また家族で来ようかな。
さて、宇都宮市街に戻ります。
宇都宮は餃子の街。ということで餃子マップを片手に、大谷町から一番近い店に入りました。
大谷11 ←美智都の餃子。味がついているので酢とラー油だけで食べるべし。
それから宇都宮はジャズの街でもあるそうです。
中心部にたくさんジャズクラブがあるとのことで、こんど来たときはそんな大人のムードもちょっぴり味わってみたいものです。
新しくカテゴリーをつくりました。
「石の街めぐり」・・・国内外の石の産地に行ったときの旅行記です。
なかなかふつうのメジャーな観光地にいけないかわりに、「石」をテーマにした旅行をするのも楽しいものです。
今までの記事もこのカテゴリーに変更したものもありますので、どうぞあらためてごらんください。

2007年1月22日

伊達冠と出会う

石屋のおかみをしていると、普通は行かないようなマイナーな場所に旅行できるのが醍醐味のひとつです。
夫の石材製品買い付けに私もついていきました。
昨年9月の岡崎に続き、今回の旅行は福島。
福島と聞いて一般的に一番イメージしやすいのは会津の磐梯高原・猪苗代だと思いますが、私たちが行ったのは福島の北東・伊達市霊山町(りょうぜんまち)です。
阿武隈川と独特にそそりたつ崖のような霊山という、雄雄しい自然に恵まれたところで、紅葉のシーズンがひときわ美しいそうです。
福島は県内のあちこちで良質の白御影がとれ、近県・宮城の黒御影や栃木の凝灰岩の産地にも近いことから、石材業者が多いのです。
今回行った霊山町の石材問屋もそのひとつ。
やはり墓石の展示が主。東北の墓石は八ヶ岳と似て黒が多いです。
今回の最初の収穫は蔵王石。
黒っぽい安山岩で、八ヶ岳の好みにも合いそうです。
安山岩はごろごろとした岩で採れるので、その自然な形を活かして表面の広いところだけ本磨きにして、側面や背面は岩肌を残すような加工をするのが合います。
今回仕入れたのは墓石ですが、田園の中に建てる記念碑などにも向いています。
福島3 今回仕入れたもの。
もうひとつ、私が気に入った石があります。
伊達冠石(だてかんむりいし)。
これも安山岩のひとつ。
岩肌はまっ黄色ですが中は濃い灰色、磨いたばかりの面はほとんど黒に近い濃い色です。
これが数年経つと赤茶色に変色するそう。
そんな短期間のうちに変化するという特性をわかってくれる施主がどれだけいるか、という点で、夫は今まで敬遠してたとのこと。
でも、岩肌の黄色と磨き面の黒のコントラストはほんとに美しいものでした。
加えて、やはりこれもゴロ岩で採石されるので、自然な形を活かした、アーティスティックな加工が魅力的です。
福島4 伊達冠石の小さめの墓石セット。
展示会場を見終わった後は郡山市内の霊園を見学に行きました。
伊達冠石の墓石を見つけました。
自然な風合いで、とてもステキです。同じ石でベンチも作ってありました。
福島5 福島6 ちょっとお邪魔させていただきました。
伊達冠石で全面本磨き加工にするとこんな感じです。
これが数年経ったもの。
福島7

確かに赤茶けていますが、上品な色合いだと思いました。
こういう風に変わるということをちゃんと説明した上で、真っ黒ではないものを好むお施主さんにはこれを勧めてみれば、と言ったら、夫も納得したよう。おかみの意見、聞いてもらえました。

2006年12月17日

塚川の石街道

長坂町塚川の北杜高校に続く道を時々通ります。
通るたびに「いいなぁ」とためいきをつくような風情を感じます。
各家が石垣や瓦屋根付きの塀を構え、ところどころに祠や燈篭。
白州の台ヶ原宿は「全国の道百選」のひとつだそうですが、それに勝るとも劣らぬ情緒を備えている通りだと言えるのではないでしょうか。
今でこそ長坂ICから七里岩ラインへは新しい広域農道を通るのが主流となりましたが、かつてはこの旧道が日野から谷戸を結ぶ主要道路でした。
八ヶ岳南麓のなかでも比較的標高の低いこのあたりは、おそらくいい農業地帯だったのでしょう。
裕福な農家の地主さんがこぞって外回りにまでお金をかけた、というのがよくわかります。
こういうところですから、石垣も立派なものです。
「間知石モドキ」のブロックが多い昨今、これだけの石垣が固まって並んでいるのはなかなか圧観です。
塚川4 間知石の谷積み
塚川3 間知石のちょっと変形の亀甲積み
塚川2 間知石、高度な技術の返しのある亀甲積み
塚川1 幅広の水路を堂々と渡す太鼓橋
塚川5 古い祠や自然燈籠
車で通り過ぎると、旧道だけに「せまいなぁ」感じることもあったりするのですが、今日はやっとじっくり歩くことができました。

2006年10月23日

岡崎マイブーム2

週末は岡崎の石祭りに行ってきました。
愛知県岡崎市といえば、最近では9月まで放送していたNHKの朝ドラの舞台として有名ですね。
「八丁味噌」は八丁通りに由来するこの町の特産品ですが、今回はあえて別の地場産業をクローズアップ。
岡崎は石材業がとても盛んなのです。
もともといい白御影石の産地である上、家康公時代の築城という一大事業を経て、技術が集まってきました。
今では中国製品に価格面でおされ、産業規模が小さくなってしまいましたが、品質では中国ものは岡崎産に遠く及びません。
会場は岡崎城のある岡崎公園に隣接する乙川河川敷。
「第15回岡崎ストーンフェア」とバルーンがあがり、初日の朝一だったのでマスコミ関係のヘリコプターもぶんぶん飛び、きれいな足を出したモデルのおねえさんたちが何十人もの記者やカメラマンの取材を受けていました。観光やお散歩がてら訪れる人も多くいました。
なかなか盛大ですが、これでも昔より期間も短くなり、規模も小さくなってしまったと夫は嘆いています。
だからこそ早くいかないといいものはすぐなくなってしまう。
買い付け目的の夫はつきあいのある業者さんのブースに行って話しこんだり、製品の写真をとったり真剣ですが、私と娘はすっかり一般のお祭り気分を楽しみました。
ぞう ←ぼくの上に乗っていいぞう
かえる ←かわりにカエルに乗る
地蔵 ←手のひらサイズのお地蔵さま
キティ ←ちゃんと許諾をとっているキティ。中国製品で、あやしげな人気キャラクターモドキに注意。
たぬき ←タヌキを見て、自分のおなかをたたく
ちゅー ←抽象的な2体のオブジェがチュ-してるように見えたか?
台車 ←石材運搬用の台車を押してみる
仏像 ←いいお顔ですねー
あかり ←ネオジャパネスク灯篭
子どもが石に親しんでいるシーンを撮ろうとする記者の人にお声がけいただき、娘もモデル気取り。
お昼はおやくそく、八丁味噌だれのたっぷりかかった、みそかつ定食をいただきました。
また来年もこれるかなぁ。

2006年7月23日

岡崎マイブーム

今日スーパーへ行くと「八丁味噌」コーナーができていました。
なるほど。NHKドラマの影響ですね。
ドラマのおかげで岡崎といえば今は八丁味噌ですが、実はもうひとつの地場産業として石材業も有名です。
岡崎周辺では良質な御影石が採れた上に、江戸時代の城下町整備の折に多くの腕のたつ石工が集まったことに起因。
日本には他にも茨城の真壁、四国の庵治などが石で有名ですが、岡崎は3本の指には入る石産地です。
(山梨も塩山周辺は石で有名でしたが、採石できなくなってきて石工も減ってしまいました。残念)
一口に石工といってもそれぞれの専門分野があります。石積み、石貼りなどの施工に長けた人や、燈篭、鳥居、仏像などの加工専門の人。
岡崎にはいい加工職人が多いのです。
今は加工品は中国などの外国製品が多数を占めていますが、岡崎製といえばいまだに高い評価があります。
ウチも鳥居は岡崎の取引企業から仕入れています。
夫のお気に入りの石は「宇寿石(うすいし)」という石。
目が細かく均一で、比較的粘り気があって固いので、鳥居のように長い部品があるものでも折れにくく細工がきれいに仕上がる、ということです。
一度岡崎の仏像石工さんに見積をお願いしたことがありました。
その人は仏像石工の中でも超有名で、作品集が本にもなっている人です。
一体つくるのには何ヶ月もかかり、まずお経をあげてからとりかかるそうです。
こういう方に大きさと希望金額と納期を電話ごときで伝えようとしたのが恥ずかしくなりました。
まさに仏師という芸術家です。
岡崎では毎年10月に乙川河畔で石祭りがあります。
岡崎の石屋さんが集まって作品・製品を披露します。
現代彫刻やインテリア小物なども売っていて、楽しいので今年もぜひ行って見たいと思っています。

2006年3月31日

古びた街角

一路真輝さん主演のミュージカル「アンナ・カレーニナ」を観に、松本に行ってきました。
「アンナ・カレーニナ」の感想についてはまた別の機会にたーっぷり書くとして、一路さんが昔宝塚時代に歌っていた「ウィーン・わが心の街」を、松本を歩いていて思い出しました。
「古びた街角、かわいい娘たち」という歌詞があります。
松本の善光寺街道沿いの中町どおりはまさにそんな感じで、石畳の道になまこ壁のお蔵が並び、ぽつぽつと提灯なんかが照らされてて、大好きです。
城下町の風情たっぷりですね。
その後、久しぶりの里帰りで神戸に行ってきました。
神戸元町の、旧居留地界隈。
ここも明治以降の石造りの建物がちゃんと残っていて、レトロな入口のお店や事務所が営業しています。
神戸の石の入口

コンクリートや樹脂系の素材では出せない味わいを、街角で見つけられた、1週間でした