おかみブログ

2008年1月25日

石冴ゆる山と田園

冴ゆる富士
おなじみ、高根町東井出の墓地。富士山を望む。
冴ゆる南ア
同じく、南アルプス連山を望む。
「冴ゆ(さゆ)」というのは厳冬の季語だそうです。
冷えるという意味ですが、空気や音が澄み切った感じがこもった言葉です。
八ケ岳の里山全体がこの冬初めての積雪となった翌日。
澄み切った空は放射冷却現象でキリリと冷え込みました。
ご先祖の仰ぎ拝むる富士冴えて
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2008年1月21日

ぶっこわれ優先だ

足を骨折して入院していた夫、昨日、約6週間の入院生活におサラバしました。
ご心配いただいた皆様、ありがとうございました。
ひとまず安心といったところです。
しかしこれですべてが終わったわけではもちろんないわけです。
まだ自分で運転できないし、
痛みの残る足で杖を突きながらの歩行なので長距離歩けない。
週1で通院もしなくてはならない。
本人も家族ももうしばらく辛抱です。
さて、そんな状態にもかかわらず、しばらく外界との接点を絶たれていた夫としては
せっかく甲府の街にきているのだからと、病院を出たとたん「本屋に寄りたい」と言い出しました。
図書館が充実し、ネットで本を買える時代ではありますが、
やはり新刊本のそろっている大規模書店は、北杜市内ではなかなか得られない情報の宝庫です。
怪我人でも情報入手・購買の権利はあるはず。
体に負担のかからないよう、30分だけだよ、と約束し、R月堂書店へ向かいました。
甲府でもこの冬初めての雪が降り始めていました。
書店は、それでも、さすが日曜日とあって駐車場はかなりうまっていました。
なるべく入口に近いほうがいいね、と探しましたが、近いところはいっぱい。
こういうときにこそ、頼りになるのが入口すぐ脇にある優先駐車場です。
車椅子マークの入った、少し広めの駐車スペース。
ありがたや。空いておりました。
こういうスペースは大きい店でもせいぜい2つくらいしかありません。
必要としている人は意外と多いので、何でもない人はとめないでほしいものです。
私が最近大好きなブログがあります。
リンクもはらせてもらっている「江戸っ子修行手控帳」。
粋なお江戸言葉でつづられる小話です。
電車の優先座席について、こんな風に書かれていたのが、小気味よく、思わず音読してしまいたくなるほどです。
夫の場合は、まさに「ぶっこわれ」にあたるのですが、
今の時代、このぶっこわれに席を譲ってくれる若者が、どのくらいいるでしょうかね。
試してみたいものです。
でも、「ぶっこわれ」は見てわかりやすいので、たぶん確率は高いでしょうね。
かわいそうなのは、元気そうな「ぢゞいばゞあ」と初期の「孕みをんな」でしょう。
「孕みをんな」については以前このブログで「マタニティマーク」なるものができたことを書きましたが、その後認知度は上がったかナ?
ちなみに「鰈(かれい)ぢァねへが子持ち」の状況のとき、
席を替わってくれたのは立ち位置から3席分はなれたところに座っていた若い外人のおにいさんでした。
がんばれ、日本の若者。
男、女をあげよう。
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2008年1月16日

道祖モアイ?

モアイ?
すがすがしくものどかな田園風景に、いったいこれは。
モアイ?2
あのー、何してはるんでしょうか。
大泉若林交差点上のほうとうやから西へ200mほど行った田園の一画。
衣のようなものが見えるからおそらく地蔵像か観音像だったんだろうけど、アタマがどこかへ行っちゃって、代わりに異国の石像のそれを乗せられた、というものでしょう。
モアイ?ヨハネ?
もともとのアタマはどこへ行ったんだ!
古いものだから単になくなってしまったのかもしれませんが、
近年石の地蔵や観音の頭がもぎとられて、闇ルートで売りさばかれたりしているという話も聞きます。
だとしたら、許せん。
ちなみに、このモアイ?ヨハネ?像のすぐ近く、県道沿いのローソンの斜向かいには
かつて首のもげた観音様が、無事処置を施されて再び鎮座しておられます。
石観音
モルタルをべっとり首につけられて、なんとなく応急処置的ではありますが。
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2008年1月15日

冬のにおい

きっぱりと寒くなった連休後半2日間。
びゅうううと吹き降ろす乾いた風がすべてを瞬間冷凍するような。
よしよし、これくらい寒くないと八ケ岳じゃないわい。
八ケ岳の向こうからの氷のにおいがするようです。
などと言えるのも今だから。
実は先週は鼻風邪をこじらせ、頭痛・発熱に続いて、完全に嗅覚不能になりました。
かれこれ1週間「無味無臭」の世界にいるハメになったのです。
からだは症状を通して、悪いところを伝え、必要なものを求めます。
熱が出るのは早くウイルスを殺しその間に抗体を作るため。
鼻水・咳もウイルスを外部に出すためです。
それでは嗅覚不能は何を示唆するのでしょうか。
私がほぼ毎日口にするもの。
仕事前のコーヒーと朝のおめざ=甘いものです。
コーヒーと砂糖はからだを冷やし、緩めるもの。
つまり仕事モードの緊張感をほぐし、適度なリラックスを与えてくれるのです。
これがほしくなるのは、楽しく仕事をするために必要な、極めて正常な反応。
だけど風邪のときにこれらをとると、冷えたからだをますます冷やし、中庸からどんどん遠ざかります。
だからコーヒーを飲ませないよう、飲んでもおいしくないよと感じさせるよう、嗅覚を麻痺させるのでしょう。
実際、香りがわからないときに飲むコーヒーは最悪です。
なんだか変に酸味だけが舌先に残り、熱いのに飲んでもおなかがあったまらない。
不思議な違和感です。
クッキーもそうです。
噛むとほのかに甘い感触が舌に触れはするものの、なんだかボソボソとして喉がつまる。
無の嗅覚世界で感じた、独特の食べ物の感触。
ふだん何かとソースや醤油をつけてしまう私ですが、そんなものつけても味が変わらないので、そのまま食べてみました。
すると素材の持つ食感が際立って感じられました。
ふわふわたまごのやさしさ。
舌でおしつぶせるほど煮詰まったおでんの大根。
キャベツのせんぎりのアク
きんぴらの歯ごたえと匂いがなくてもわかる舌への甘み。

今日、昼近くにスーパーに入ったら、急にいろんな匂いがしてきました。
「おっ!フッカツか!」
とたんに翡翠のコーヒーが飲みたくなりました。
トラジャ。酸味の奥に深い香りを感じ、鼻腔の奥に入って行きました。
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2008年1月14日

入院スタイル

夫が昨年暮れに骨折入院。
1ヶ月が過ぎ、順調に回復すると同時に病院でくつろぎの日々を送っているようで、
それはそれでなんだかうらやましい今日この頃です。
一般病棟に移ると、悩むのが着替えです。
よく考えたら自宅では穴の開いたようなシャツや、毛玉がまとわりついたようなスウェットパジャマも普通に使用している。
「誰に見られるわけでもない」などと色気のないこと言って、本人もほしがるわけでもなし。
本来日本の奥さんはダンナさまのものは常にきちんとしておくものなのでしょうが、
そういう感覚って薄いですねー現代では。
ましてや子供が生まれると子供服はかわいいから買っちゃうんだけど、
お父さんのものはどんどん後回しになってしまう。
あれ?もしかして我が家だけ?
とにかくちょっとイイものがあまりない。
一日中寝巻きで過ごすのだから、
①着心地がよくて
②もちろん穴が開いてたりしてなくて
③人に見られてもそこそこかっこよくて
④足首や腕の包帯が換えやすいもの。
初めてといってもいいくらい、夫が「着替え買って来て」と頼むので、
年の瀬も押し迫った夕方の大渋滞の中、急遽甲府の店を奔走しました。
IYでトランクス2枚セット、丸首シャツ(日本製)2枚セット、あったか素材のパジャマLLサイズ、ヒモ無し運動靴、
そしてユニクロでフリースのインナージャケット。
(ユニクロではついでに娘のスウェットパジャマも新調しました。)
一通り袖を通し、まあまあ満足した様子で夫、次には少々苦笑いしながら
「ユニクロのフリースか。なんか、負け、ってかんじだね」
入院スタイルは一に機能性、二に経済性。
特にアレルギーなどがなければ化繊でも十分快適です。
フリースはあったかいし、適度に湿気も放出するし、入院中ちょっと院内を歩き回るのにはまあ、適当でしょう。
にも関わらず、確かに「負け」って感覚がちらつく。
「ユニクロ」「フリース」イコール「安い」「早い」「単純」「多い」
なんとなく、世間の流れに負けた、というか、粋じゃないというか。
では「勝ち」の入院スタイルとは?
藍染の浴衣を着流し、大島の半纏なぞハラリと羽織る。
やっぱりこれだね、とLLでもまだ裄が短いパジャマで、夫また苦笑いしました。
仕事始めと風邪が重なり、具合悪いのにバタバタしてすっかりブログから遠のいていましたが、ネタはけっこうたまってます。
またボチボチ、書いてきます。
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2008年1月3日

おかみブログダイジェスト・2008

2008年2日目。
予告どおり昨年1年間の記事の中から、自選10記事を発表〜!。
入選のポイントは
・テーマにそっている
・今読んでもあまり恥ずかしくない(普遍性)
・カテゴリーが均等になるように
・特定の人や店は割愛 →また別の機会に別の形でまとめる

<石>
高根のお墓・神社でお花見
石のある風景の中で、一番絵になる季節。
だから石屋はやめられない〜規格無の不思議の巻〜
あまり知られていない石屋さんのお仕事をのぞいてみましょう。
<子>
カンバン娘
2才の誕生日を控えた娘の意外な発言とは?
遠足のお弁当
身勝手なこだわり、でも愛情たっぷりお弁当とおやつ。
<山>
北杜市の新たな観光振興を考える
観光って何?大きなレジャー施設を持たない北杜市の生きる道は。
にわか鉄道ファン
2007年夏はまった小海線の新たな魅力。北杜24景にも選ばれた情景です。
<伝>
我が家も安心、火の用心
家が竣工したら欠かせない年中行事。
俳句会に入門
俳句始めました。季語を知ることは微妙な季節や風景の変化を知ること。
<素>
重ね煮パーティ
食の基本。素材の味をまるごといただく究極の料理術。
インフルエンザ?
薬は万能じゃない。
今後もよろしくおつきあいください。
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2008年1月1日

おかみブログへようこそ

平成20年が明けました。
年末にきて大きな厄を背負いましたが、まあ経過は順調、
心配も少なく娘と2人で静かに年を越しました。
年賀状も少し遅くなりましたが、一応年内にほぼ出し終わり一安心。
その年賀状で、今年は正式に(?)ブログ紹介をしました。
去年もこのブログで書きましたが、年賀状だけでもつきあいを大切に続けている友人に対して、
「これ見てね」のブログは本当に便利なものです。
検索キーワード「石屋のおかみ」でYahoo、Googleともに1位。
探しやすくなりました。
ということで、年賀状を見てきてくださった方もいつもの常連さまもどうもありがとう。
改めて、今年もよろしくお願いします。
ブログ立ち上げ当初は石屋を宣伝しようと、ムリして石のことばかり書いていましたが、
いまや筆者やよぶの趣味の世界。
でも一応テーマを掲げて書くようにしています。
石 「石」・・・石屋の宣伝、墓石、石像物の入った田舎の風景写真
む 「子」・・・子育て体験記、子育て環境に思うこと
やま 「山」・・・八ケ岳お勧めの店やスポット、田舎暮らし
太鼓 「伝」・・・伝統文化に思うこと、最近入門した俳句
森 ごは 「素」・・・自然素材の環境、エコロジー、マクロビオティック、からだと健康
上のテーマに合いそうなネタをみつけてきて、なるべく個人的な日記調にならないように、書いています。
いろんな人の意見を聞きたいから。
ここの暮らしを知ってほしいから。
コメントもお待ちしています。
一般公開してもいいものはそのままで。
管理者のやよぶだけに宛てたい内容なら
コメント投稿画面の一番下に「管理者にだけ表示を許可する」にチェックを入れていただければけっこうです。
次回はお正月スペシャル!恒例・ブログダイジェスト!
「石屋のおかみの八ケ岳絵日記」ベスト10!

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2007年12月27日

備えあれば憂い無し?

夫の入院先へ通うようになって2週間が過ぎました。
重態のときは心配だから毎日、手術が終わって落ち着いた今も1日おきには行っています。
小淵沢から甲府市中心部の病院まで、高速を使えば約40分から1時間。
この機会にと、ETCをとりつけましたが、
往復2時間の道のりをほぼ毎日通うのはけっこうハードです。
八ケ岳に移住希望者の半数以上が必ず心配するのが公共交通機関と病院。
確かにこういう事態になってみると、私が車を運転できなければどうしてただろう、というギモンはわいてきます。
だからといって
手術・リハビリ可能な大きな病院が歩いて行ける距離にある。
バスや電車が不自由なく使える。

という必要が果たしてどのくらいあるのでしょう。
そりゃ、ないよりはあったほうがいいに決まってます。
保険と一緒です。
こういう事態になって、「やっぱり1日目から出るのがよかった」「1日1万円出るのがよかった」といっても後の祭りです。
だけどどんどん補償額を増やせば、その分保険料もあがって、どこまで想定してもキリがない。
生活だって、すぐ近くに総合病院があって、各種専門医院があって、大型スーパーがあって、駅や学校、銀行、塾、エステ・・・。
普段の生活にどこまでどれだけ近ければいいんだろう。
あるいは、これらがそろっている場所が、果たして住みたい場所なのだろうか。
都市のベッドタウンの新興住宅地を通ると、おしゃれな造りの「○○クリニック」をよくみかけます。
こういうのを見てると、「そういえば私、大丈夫かしら、行って見なきゃ」という気分になってしまいます。
エステ感覚で病院に行きたくなる・・・。
病院を見ると病気、スーパーを見ると飢餓状態。
「将来車が運転できなくなったら」。
将来必ず車が運転できなくなるかどうかは誰にも分かりません。
もしかしたら昨日まで元気であるひぽっくり死ぬかもしれないし、
自分で車を運転しなくても生活手段は他にもあるかもしれないし、
少なくとも今現在元気な人がそれ中心でモノゴト考えることはない、と思う。
それ以前に、車で消費財を買いに行ったり病院漬けになるような生活に、なるべくならないように工夫することのほうが、今の時代には大事なんじゃないかと。
ウチも今のような状況になってみて、毎日2時間の移動時間は正直キツイ。
でも、家に帰って満月に照らされた山並みを見るとほっとします。
第一、2時間程度で弱音をはいていては、都会の通勤ラッシュにもまれるお父さんたちやキャリアウーマンたちに怒られてしまいますね。
月夜
満月は茅ヶ岳から昇る
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2007年12月19日

言葉のチカラ

交通事故で右大腿骨など大きな骨を折って入院した夫。
10日目の今日、手術が行われました。
救命センター付きの整形専門医からの説明によると、
きれいに折れている。
厚い筋肉に囲まれたこのような大きな骨を接ぐには骨の中に金属を入れるという手術が唯一の手段。
年間100件の手術をする立場から見れば、めずらしい折れ方ではない。
ギプスを使わないので手術をした次の日から足をまげて車椅子に乗れる。
ただし、リスクがないわけではない。
例の脂肪塞栓症候群を発症しているので、手術によってその症状を助長してしまう場合もある。
しかしいつまでも待っていては骨が固まる一方なので、症状が治まり、感染の危険がないと認められるこの日が手術に最適と思われる。
説明の間、緊張をみじんも感じさせず、時折笑顔も浮かべて、目を見て話してくれました。
県下で最大規模の病院だけあって、技術も設備も整っていますが、
一番安心したのが、これらの言葉でした。
いわゆる<インフォームド・コンセント>というやつで、説明の後同意書にサインをしました。
それからいろんな方からたくさんのお見舞いの言葉をいただきました。
「みんなで神様にお祈りします」
「近くなんだから、遠慮しないで」
「どんどん他の人に甘えればいい、SOSを出されれば友人としては嬉しいものです。」
「家族はちゃんと寝るように」
皆様の言葉がどーんと気持ちをささえてくれました。
「お正月着物着るから帯かして」
??こういうすっとこどっこいもいます。
遠くに住む身内の一人ですが、裏を返して落ち着いて受け止めれば、悲観する必要のないその程度のケガだということ。
私自身はあんまり他人のことに気がつかない性格ですが、
今回のことで、どれほど相手を気遣うことがチカラになるかを身をもって知りました。
このブログはなるべく個人的なお手紙調では書かずにいようとしていましたが、今回ばかりはこの場を借りてお礼申し上げます。
皆様、ご心配いただきまして、本当にありがとうございました。
「おかげさまで」手術成功しました。
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2007年12月15日

キュウソクが急務

先週土曜日夕方、夫、救急車で運び込まれる。
「イタイイタイ」と大騒ぎするも、「記念写真撮っといて」「宝くじ買っといて」などと異常な冴え様。
家族半ばあっけにとられて、こんなに元気じゃ入院中もバンバン連絡事項入れて働かしちゃえ、などと笑いながら帰宅。
次の日、一変。
なんだか目がうつろ。
薬のせいか。
三日目。
白目を向きながら意味不明なことをつぶやく。
一応私のことは認識しているらしい。でも無反応。
上半身は異常がないので普通食を出されるが、箸が持てない。
ご飯粒を口に運ぶのに口に入ってない。
四日目。
さらにひどい昏睡状態へ。
箸も持てないほどボーっとしているのに鬼の看護婦さん、「食べないと抵抗力が弱くなって、治りが遅くなっちゃいますよ!」
病名、『脂肪塞栓症候群』。
大腿骨や骨盤などの大きな骨を折ったとき、たまにおこりうる、骨折の合併症だそうだ。
大骨折をした部分から脂肪が発散され、血管を詰まらせる。
(近年の研究では、直接脂肪が血管を詰まらせるのではなく、脂肪が血中に入り込むことによって白血球が異常行動をおこすせいではないかと考えられている)
そのため、脳梗塞のような状態になり、意識障害を引き起こす場合がある。
他の症状に、微量の出血や充血、呼吸障害など。
別部屋に私独り呼ばれてCTスキャンの映像を見ながら医師から説明を受ける。
「25年ここで救命を担当し、臨床経験がありますが、知っている限り1人だけ、この合併症直接の原因による死亡事例がありました」
ちょっとまて。それはさすがに聞き捨てならない。
しかし、ほどなく、これは医者のエクスキューズで、もし今回万が一のことがあっても医療ミスではないとでもいいたいのだろう、ということに気づいた。
そういえば、よく時代劇で、深手を負った武者が、三日三晩昏睡状態でうわごとを言ったりのたうちまわったりする。
はっと気がつくとかなりの日数が経っていて、きれいな娘さんに
「気がつきましたか?」と声をかけられ、
「ここは、どこだ」と起き上がろうとすると痛くて起きれない。
「いけません、傷が深いのです」などと介抱を受ける。
・・・などと妄想してみながらなんとか現状を受け止める。
つまり、大きな傷を負ったときにはそれだけの休息が必要なのだ。
意識がなくなるほど眠ることで、一番痛い時期をなんとか通り過ぎることができる。
それを科学的に分析すると、なんちゃら症候群というタイソウな名前がついたりするわけだ。
自分なりに解釈しているうちに五日目。
一応普通に話ができるようになる。
越えたらいきなり「2月に一時退院できるかなぁ」という。
何があるのかと思ったら、石工の資格試験があるそうだ。
・・・やっぱりバカになっちゃったんだろうか。